第666回
サービス業のニセモノ問題
中国で起業した場合、運良く事業が軌道に乗っても、
それを長続きさせるのは容易なことではありません。
なぜなら、中国の人たちは
1から何かを創り出すことは苦手ですが、
既にあるモノやサービスと
全く同じものを作ることは大の得意だからです。
このため、製造業では、
中国に進出した日本企業が、
叩いても叩いてももぐら叩きのもぐらのように
次々と出てくるニセモノの対策で頭を痛めていますが、
飲食業などのサービス業も例外ではありません。
ちょっと繁盛すると、
すぐに低価格のニセモノが出てきてしまいます。
いくらこちらが本家だと言っても、
お客さんは味が同じなら値段の安い方に流れますので、
すぐにお客さんが来なくなってしまいます。
そして、その後は
「どちらが利益をぎりぎりまで削れるか」という、
不毛な価格競争になってしまうのです。
例えば、ラーメン屋。
北京に「瓦屋(わーうー)」という
日本人の方が開いたラーメン屋さんがあります。
ここのラーメンは日本のように、
しょうゆ、塩、みそ、とんこつに分かれており、
日本のラーメン屋と比べても遜色のない味ですので、
私は家族を連れてわざわざタクシーに乗って
食べに行ったりしていました。
しかし、最近、私の家から歩いて行ける距離のところに、
店の名前が違うにも関わらず、
メニューが「瓦屋」とそっくりの
ラーメン屋ができました。
最初は余りにメニューが似ているので、
「瓦屋」の分店かと思ったのですが、
どうも違うようです。
今では、タクシーに乗って
本家「瓦屋」に行く機会はめっきり減ってしまい、
歩いてこのラーメン屋に行くようになってしまいました。
こうした例をもう一つ。
北京に「Hatsune」という日本料理店があります。
このお店は日本人ではなく、
アメリカ帰りの中国人の方が開いたのですが、
いかにもアメリカ帰りらしいモダンな内装に、
「カルフォルニアロール」や「キャタピラーロール」などの
洋風寿司が北京在住の欧米人やお金持ちの中国人に受け、
洋風ロール寿司が1本70元(1,050円)前後、
という高価格にも関わらず、
連日、予約を入れないと席が取れないぐらい繁盛しています。
しかし、先日、ある別の日本料理店に行ったところ、
「Hatsune」の洋風ロール寿司を
そっくりそのままマネしたメニューがあったので、
ビックリしました。
「Hatsune」には近所に事務所を構える
モトローラ北京法人の社長の大好物であるため、
「モトローラロール」と名付けられた洋風寿司があるのですが、
その日本料理店はその由来を知ってか知らでか、
「モトローラロール」もそのままメニューに載せていました。
もう、「Hatsune」のマネ、というのがバレバレです。
中国のニセモノ問題というと、
製造業にスポットが当てられがちですが、
それは飲食業などのサービス業でも同じなのです。
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