第632回
上海の「クローンタクシー」

中国の空港にはどこの空港にも必ず
「タクシー?タクシー?」と声を掛けてくる
客引きがいます。
こうした人たちは、
タクシーの営業許可を得ていない、
いわゆる「黒車(へいちゃー)」の運転手です。

日本では営業許可を得ていないタクシーのことを、
そのナンバーの色から「白タク」と呼びますが、
中国では「黒社会(へいしゃーほい、暴力団)」など、
「違法」とか「裏」などの意味を表すときの色は
「黒」と相場が決まっていますので、
無認可タクシーは「黒車」となります。

タクシー乗り場に正規のタクシーが待っていなかったり、
順番待ちの人が長蛇の列を作っていたりすると、
ついつい「黒車」の誘いに乗ってしまいそうになりますが、
人気のないところに連れて行かれて身ぐるみ剥がれる、
なんていう可能性も無きにしも非ずですので、
「黒車」には何があっても絶対に乗ってはいけません。

「黒車」は通常、普通の乗用車で、
メーターも「タクシー」の表示もありませんので、
一見して「黒車」とわかるのですが、
上海では最近、ホンモノそっくりの
「黒車」が増えているそうです。

この「黒車」、実在のタクシーをそっくり模倣しているので
「クローンタクシー」と呼ばれているそうです。
車体の色、ナンバープレート、営業許可証、メーターまで
ホンモノそっくりに作られているので、
乗客は何の疑いもなく乗車してしまうそうです。

ホンモノのタクシーと
「クローンタクシー」を見分ける唯一の方法は、
タクシーの代金をプリペイドカードで支払ってみること。
上海では各交通機関共通の
プリペイドカードが普及していますが、
さすがの「クローンタクシー」も
このシステムまではマネができなかったようです。

これまでに上海で摘発された
「クローンタクシー」は200台以上。
営業中のタクシー運転手が
たまたま「自分の車」を見つけたり、
ホンモノのタクシーの運転手が
身に覚えのない交通違反で罰金を請求されたりして、
「クローンタクシー」の存在がばれるそうです。

さすが「ニセモノ王国」中国、
タクシーにまでニセモノが出たか、という感じですが、
実在のタクシーを調べて、車体に色を塗って、
ナンバープレートを作って、
営業許可証やメーターを取り付ける、
なんてことをするカネと時間があったら、
まじめに営業許可を取って、
堂々と営業したらいいのに、と思いました。


←前回記事へ

2006年11月6日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ