第615回
わいろは安上がりな投資?!

自分が所有する炭鉱が
閉鎖の危機に瀕している炭鉱老板は、
今まで稼いだ豊富な資金があるわけですから、
安全対策、環境対策のための設備を買い、
合理的な採炭計画で自社の炭鉱を大規模化して
操業を続ければよいと思うのですが、
彼らはそういう風には考えず、
「そんな大きな投資をするぐらいなら、
役人を買収したほうがよっぽど安上がりだ」
と考えるようです。

実際、山西省では、
炭鉱の事故防止と安全生産の指導に当たる
安全管理監督局の役人が、
今年に入って既に7人、
収賄の容疑で逮捕されています。

中国青年報によれば、
同省盂県の元安全監督局長・韓氏は、
個人所有の小規模炭鉱の存続の可否、及び、
火薬取扱の許認可や定期安全検査で
手心を加えた見返りに、炭鉱老板から
319万元(4,800万円)を受け取った収賄の罪で、
懲役15年の判決を受けました。

また、同省交口県では、2004年5月、
個人所有炭鉱の爆発事故で33人が死亡。
その炭鉱の出資者を調べたところ、
同県の元安全監督局長である
武女史の名前が出てきたことから、
収賄や職権濫用が発覚、
同氏は懲役13年6ヶ月の判決を受けました。

年収1億元の炭鉱老板にとって、
319万元などほんの10日分の収入。
これで炭鉱の操業が低コストで何年も続けられて、
数億元の利益を上げることができるのならば、
こんなに安上がりな投資はありません。

一方、田舎の県の
安全監督局長にとっての319万元は、
生涯賃金をはるかに上回る金額。
「これ以上偉くなることもないだろうし、
オレの人生ここまでかなぁ」なんて思っている時に、
こんな大金を目の前に積まれたら、
カネに目がくらんでしまう気持ちも
わからないではありません。

中国は今後、炭鉱の安全対策、環境対策、
資源の有効利用に本腰を入れて
取り組んでいかなくてはなりません。
しかし、こうして贈賄側と収賄側の利害が一致し、
みんなが「わいろは安上がりな投資」と考えている限りは、
中国の汚職は根絶できず、そうした対策は
いつまでたっても効果が出ないのではないでしょうか。


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2006年9月27日(水)

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