第514回
中国では通用しないであろうサービス
科学が非常に発達した22世紀に作られた
ドラえもんの道具の中にも、
20世紀の世界では全然役に立たないものがあるように、
日本のサービスの中にも、中国では通用しないであろう、
と思われるものがたくさんあります。
そうした、中国では通用しないであろうサービスの筆頭が、
通信販売やネット取引なのではないか、と思います。
日本では、現在、通信販売やネット取引が
店頭販売のシェアを侵食しつつあります。
通信販売やネット取引の利点は、
店舗を構える必要がないので、
家賃や人件費を省くことができ、
その分、モノを安く消費者に提供することができる、
という点です。
しかし、これはあくまでも、
その社会が信用社会である、
ということが前提条件となります。
先日、お話した通り、中国は不信社会です。
家電量販店で電気製品を買う場合、
日本人は、箱をそのままレジに持っていって
買ってしまいますが、
中国の人たちは、箱から出して、電源を入れて、
ちゃんと動くかチェックしてからでないと買いません。
大手家電メーカーの製品であっても、
全然信用していないのです。
先日、日本のテレビを見ていたら、
中国からのお客さんが増えている秋葉原で、
電気店がお客さんの買った電気製品を箱から出して、
作動チェックをしてから引き渡すサービスを始めた、
というニュースをやっていました。
日本の電気製品は、
そんなことをしなくても大丈夫なのですが、
購買前の作動チェックが
習慣となってしまっている中国の人たちは、
これをやらないと不安なんですね。
そんな不信社会の中国で、
通信販売やネット取引を始めたら、
トラブルが多発するのは火を見るより明らかです。
郵便小包で届けられた電気製品が動かなくなった場合、
お客さんは最初から不良品だった、と主張しますし、
販売店やメーカーはお客さんの使い方が悪かったと主張します。
両者の意見が平行線をたどれば、こんどは、
その電気製品を運んだ運送業者が、
小包を乱暴に扱ったせいなのではないか、
ということになりますが、
運送業者がそんなことを認めるわけがありません。
結局、責任の所在がはっきりしないまま、
販売店、メーカー、運送業者、お客さんの泥仕合は、
果てしなく続いていくのです。
店頭での作動チェックは、
そんな事態が発生するのを避ける役割を果たしています。
作動チェックは「買った時点では、ちゃんと動きましたよ」
ということで、故障の責任を
販売店側からお客さんに移管する儀式なのです。
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