第501回
日本人の素質(すーじ)の高さ

「両国民の相互理解」は日中友好の基本です。
しかし、日本人と中国人がお互いのことを、
十分に理解しているか、といえば、
ほとんど理解し合っていない、
というのが現状ではないでしょうか。

確かに日本には、
「中国人、というのはこういう人たちだ」
ということを書いた本がたくさんあります。
しかし、それらは、中国の人たちの非常識さ
(と言っても、日本人の常識から見ての非常識さですが)
をおもしろおかしく書いたものがほとんどです。

公共の場所で大声で話す、列に並ばない、
交通ルールを守らない、ゴミはその辺に捨てる、
衛生の観念が薄い、サービス精神が全くない、
無責任、カネを払わない、などなど。

これらはある部分本当なのですが、
近頃は、経済発展が進むに従って、
ずいぶん事情が変わってきています。

最近、中国の人たちの間で、
素質(すーじ)という言葉が
頻繁に使われるようになってきました。

日本語の素質(そしつ)は、
学問の素質がある、とか、スポーツの素質がある、
というように使われ、
生まれ持った才能のことを意味しますが、
中国語の素質(すーじ)は、
行儀の良さ、育ちの良さ、しつけの良さ、
というようなニュアンスの言葉です。

素質高(すーじがお)と言えば、
行儀が良い、ということですし、
素質低(すーじでぃー)と言えば、
行儀が悪い、という意味になります。

そして、素質(すーじ)の高い人たちは、
行儀の悪い人たちに不愉快な思いをさせられると、
「あの人たちは、素質(すーじ)が低いから...」
と吐き捨てるように言ったりするのです。

日本で思われているように、中国人が全員、
素質(すーじ)が低いわけではないのです。
逆に言うと、「中国人は行儀が悪い」
と言っている日本人は、
行儀が悪い中国人がいるようなところにしか
行っていないのです。

そして、中国で素質高(すーじがお)のお手本として、
いつも筆頭に挙げられるのが日本人です。
日本人の礼儀正しさ、勤勉さ、規律を守る姿勢は、
中国でも有名です。

中国の交通安全教育のビデオでは、
車が通っていなくても赤信号で止まっている
日本人の映像が流され、
「みなさんも日本人を見習って、
交通ルールを守りましょう」
というコメントが流れる、と聞いたことがあります。

中国には「小泉は嫌いだけれども、
日本人の素質(すーじ)の高さは見習うべきだと思う」
という人がたくさんいるのです。

サッカー日本チームのトルシエ元監督に
「赤信号でも車が来なければ、
自己の判断と責任において渡るべきなのではないか」
と揶揄された、
日本人の愚直なまでにルールを守る姿勢は、
これから素質(すーじ)の高い国家に
なろうとしている中国では、
高い評価を受けているのです。


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