第500回
日中関係最悪の年
昨年2005年は、日中関係にとって最悪の年でした。
4月の中国での反日デモ。
靖国問題、教科書問題、
東シナ海ガス田問題、尖閣諸島問題。
そんな中で「政冷経熱(ぢょんるんじんるぁ)」と言われ、
好調を維持してきたビジネスの世界の日中関係も、
中国側からは「このまま「政冷」の状態がいつまでも続けば、
「政冷経冷(ぢょんるんじんるん)」になってしまう
可能性もある」といった発言がなされるようになっています。
一方の日本企業は、テレビなどで毎日のように報道された
中国での激しい反日デモの様子を見て、
「うちの会社はとんでもない国に投資しているんだ」
ということに改めて気づき、
「チャイナリスク」を避けるために、
今までの中国一辺倒の海外戦略を改め、
生産拠点を東南アジアやインドに分散し始めました。
こんな状況下、中国でも日本でも、
両国関係の悪化や、両国間に横たわる問題が、
多くのマスメディアで報道され、
中国には「反日派」が、日本には「嫌中派」が
どんどん増えていきました。
問題なのは、マスメディアによって流される報道は、
相手国のほんの一部の人たちの考えであっても、
その国の国民全員がそう考えているかのように
伝わってしまう、という点です。
反日デモに参加した数万人の人たちは、
本当に日本が嫌いなのかもしれませんが、
その他の十数億人の人たちは、
日本は好きでも嫌いでもなく、
そんなことより、
いかに自分の収入を上げるか、の方が
はるかに興味のある問題なのです。
更に、マスメディアで報道される一部の人たちの考えは、
過激であればあるほど、ニュースの価値が高まります。
「中国人が「愛国無罪!」と叫びながら
日本大使館に投石しました」
というのはニュースになりますが、
「日本人と中国人が一緒に植樹をしました」
なんていうのはニュースにならないのです。
そして、そうした極度に誇張された報道を鵜呑みにして、
中国では日本人に会ったことのない「反日派」が、
日本では中国人に会ったことのない「嫌中派」が
それぞれたくさん生まれています。
マスコミ関係の人たちにはもちろん悪意はないのですが、
マスメディアが持つ特性が、
結果的にこうした事態を
招いてしまっているのではないでしょうか。
まずは、日中両国の国民が、
マスメディアの報道を鵜呑みにせず、
お互いの本当の姿をもっと理解しようとすること。
2006年の日中関係は、
この「両国民の相互理解」が
キーワードとなるのではないかと思います。
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