第494回
「上海シフト」に異議あり!

日本企業の中国進出、
と言えばやはり上海です。

上海は、
日本語を話せる人材が多い、
日本人に対する感情が良い、
法律が外資企業に対してやさしい、
人々の頭がやわらかく新しいものを受け入れやすい、
長江デルタの近隣都市を加えると
1億人の巨大マーケットである、
気候も温暖湿潤で日本と似ている、などなど、
日本企業が進出しやすい条件が揃っています。

そんなことで、以前は北京とそれほど変わらなかった
上海に住む日本人の数は、ここ数年で急激に増えています。
日本大使館領事部によれば、
昨年時点での日本人在留登録者数は、
北京が7,600人に対し、上海は35,000人。
在留登録をしていない人も考えれば、
北京に住む日本人が約10,000人であるのに対し、
上海に住む日本人は50,000人を超えていると言われています。

「北京は政治の都、上海は経済の都」ということで、
最初は北京に中国の本社機能を置いた日本の大手企業の間でも、
その機能を上海に移す「上海シフト」の動きが広がっています。

引越の仕事をしていると、
日本企業の駐在員の動きが非常によくわかるのですが、
実際、上海から北京に引っ越してくる人より、
北京から上海に引っ越す人の方がはるかに多いのです。

しかし、中国ビジネスに詳しい
いろいろな方のお話を聞いていると、
こうした日本企業の「上海シフト」は
非常に大きなリスクをはらんでいるようです。

まず、日本企業が上海に進出して、
上海市内で商売をしている分にはよいのですが、
一歩上海を出ると、とたんに上海市政府の庇護がなくなり、
営業活動に厳しい規制を課されたりすることがあるようです。

確かに上海は外資企業にとって
商売がやりやすいところではあるのですが、
上海市のルールは、他の都市では通用しません。
やはり、中国での全国展開を目指すなら、
北京に本社を置いて、中央政府から
全国展開のお墨付きをもらう必要があるようです。

また、上海市内で何かトラブルが起こったときも、
上海の出先機関といくらやりあっても
いっこうに解決しなかったことが、
北京の本省からの鶴の一声で、
いとも簡単に解決してしまう、
というようなこともあるようです。

将来的には、上海は中国どころか、
アジア経済の中心になる、ということで、
日本の大企業は「上海シフト」を進めているわけですが、
中国の行政区分からすれば、
上海は所詮、一地方都市に過ぎません。

そして、中国ビジネスは、その規模が大きくなればなるほど、
行政との関係を無視して進めることができなくなります。

上海市内で細々と営業をしていればよい、
という中小企業ならまだしも、
全国展開を目指す日本の大企業は、やはり、
中国の本社機能を北京に置くべきであり、
「上海シフト」をしてはいけないのです。


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