第487回
中国版「振り込め詐欺」

さまざまな手口で人をだまして、
指定の銀行口座にお金を振り込ませる
「振り込め詐欺」。

NHKのニュースで
「振り込め詐欺」の被害が伝えられるたびに、
私は「これは素直に他人の言うことを信じる
日本人だから被害にあうのであって、
めったなことでは他人を信用しない中国人には
通用しない」と思っていました。

ところが、予想に反して、
この「振り込め詐欺」、
中国でも被害が広がっているようです。

上海では、7月半ばからの3ヶ月半で
2万件を超える「振り込め詐欺」の通報があり、
内、1.2万件が摘発されたそうです。
その結果、805台の携帯電話を使用禁止にし、
5つの銀行口座を凍結したそうですが、
いまだに「振り込め詐欺」の被害は
続いている、とのことです。

詐欺グループはそのほとんどがアモイ市など、
福建省の沿海部を拠点にしていると見られるようです。
福建省の対岸の台湾でも
「振り込め詐欺」が横行している、とのことですので、
この招かれざるブームは、
台湾から上陸したものかもしれません。

さて、中国の「振り込め詐欺」グループの
典型的な詐欺の手口ですが、
日本のものと遜色がないぐらい手が込んでいます。

1) まず、偽造した身分証で、
  携帯電話番号を取得し、銀行口座を開設する。

2) 「銀行からのお知らせ」という形で、
  携帯電話のショートメールに、
  架空の引き落とし通知を流し、
  問い合わせの電話を指定の番号にかけさせる。

3) 指定の番号に電話をすると、
  電話に出たニセ銀行員は、
  詐欺の疑いがある、ということで、
  公安局金融犯罪課に通報するようアドバイスし、
  金融犯罪課の電話番号を教える。

4) 教えられた番号に電話をすると、
  電話に出たニセ警察官は、
  更なる被害を防ぐため、
  銀行の担当部門に電話するように言い、
  銀行の担当部門の電話番号を教える。

5) 教えられた番号に電話をすると、
  電話に出たニセ銀行員は、
  被害を防ぐため銀行カードの
  暗証番号を変更するように求め、
  その手数料を指定の銀行口座に振り込ませる。

冷静に考えてみれば、銀行が暗証番号の変更に
手数料を要求するのはおかしいですし、
万一、手数料が発生したとしても、
本当の銀行だったら、新たに振り込む必要はなく、
口座から引き落とすことも可能なはずです。

しかし、めったなことでは
他人を信用しない中国の人たちも、
こうした手の込んだ手口には
コロッとだまされてしまうんですね。

もしかすると、普段から、
なにか一つ問い合わせるのでも、
いろいろなところに「たらい回し」にされることに
慣れている中国の人たちは、
こうやって銀行→公安局→銀行と、
「たらい回し」にされる
中国版「振り込め詐欺」の手口があまりにリアルで、
かえって信用してしまうのかもしれません。


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