第480回
「エネルギー浪費国家」の汚名
今回の「第11次5カ年計画」草案では、
「経済発展優先から安定優先へ」という
明確なビジョンが示されたわけですが、
もう一つの目玉は、「資源節約型社会の構築」です。
具体的には「第11次5カ年計画」期間中
(2006-2010年)の5年間で、
GDP単位当たりのエネルギー消費を、
2005年末比で20%減らすそうです。
これは、エネルギー効率を上げて、
より少ないエネルギーで、
より多くの付加価値を生み出す社会を構築する、
ということです。
今や世界第2位の
エネルギー生産、消費国となった中国ですが、
そのエネルギー効率は恐ろしく悪いのが現状です。
IEA(International Energy Agency)の資料によれば、
2002年、中国はUS$1,000のGDPを稼ぎ出すために、
石油換算トンで1.02トンの
一次エネルギーを消費しています。
同年の日本の数字が0.09トンだったことを考えると、
中国は同じGDPを稼ぎ出すのに、
日本の11倍のエネルギーを消費している、
ということになります。
ま、中国の1960年時点での数字が
4トン以上だったことを考えれば、
飛躍的に改善してはいるのですが、
それでも、日本などの先進国に比べれば、
「エネルギー浪費国家」であることに
変わりはありません。
では、中国はどうやって
GDP単位当たりのエネルギー消費を
20%も削減するのか。
具体的な施策はまだ示されてはいませんが、
国家機関の研究者などが提案しているのが、
エネルギーの消費に重税を課すことです。
税金を重くすれば、エネルギーの消費者は
浪費をしないように気をつけるようになりますし、
徴収した税金を使って、省エネ技術の開発支援や、
企業や住民の省エネコストの補助金を
出すことができるようになります。
まさに一石二鳥、というわけです。
もう一つの考え方は、
第三次産業の比率を上げる、
というものです。
中国の2004年時点の
GDPに占める第三次産業の割合は31.8%。
この数字は、先進国はもちろん、
世界平均よりも低い数字だそうです。
中国のエネルギー効率が悪いのは、
エネルギーを大量に消費する第二次産業が、
中国の主力産業だからです。
エネルギーをほとんど消費しない第三次産業が
GDPを押し上げてくれれば、
GDP単位当たりのエネルギー消費は
劇的に下がるはずです。
中国は今後、
「エネルギー浪費国家」の汚名を返上すべく、
「世界の工場」から、
「サービス業が発達した高付加価値国家」への
脱皮を図っていくのです。
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