第478回
「国民所得倍増計画」

今回の「第11次5カ年計画」草案で、
中国共産党は「5カ年計画」が終了する
2010年時点の国民1人当たりのGDPを、
2000年の2倍にする、という目標を盛り込みました。

2000年時点の国民1人当たりのGDPは
US$857でしたので、2010年の目標は
約US$1,700ということになります。
中国はこの5年間、
8から9%代の高成長を続けてきましたので、
この目標を達成するためには、今後5年間、
年平均5.7%程度の成長をすれば済むそうです。

会社の目標設定シートにこんな低い目標を書いたら、
上司に「おまえ、会社なめとんのか!」と怒られそうです。

国民1人当たりのGDPが倍増する、ということは、
国民1人1人が生み出す付加価値が倍増する、
ということですから、
普通に考えれば当然、所得も倍増します。
所得が倍増して国民が豊かさを実感するようになれば、
国家を転覆させよう、なんていう人は出てきませんので、
共産党一党独裁政権は安泰、というわけです。

「所得倍増」という言葉で思い出すのは、
1960年に日本の池田勇人首相がぶち上げた
「国民所得倍増計画」です。
この計画は、10年で日本のGDPを2倍にして、
国民の所得を倍増させる、というものです。

曰く「国民所得倍増計画は、
速やかに国民総生産を倍増して、
雇用の増大による完全雇用の達成をはかり、
国民の生活水準を大幅に引き上げることを
目的とするものでなければならない。
この場合、とくに農業と非農業間、大企業と中小企業間、
地域相互間、ならびに所得階層間に存在する
生活上および所得上の格差の是正につとめ、
もって国民経済と国民生活の
均衡ある発展を期さなければならない」。

この「国民所得倍増計画」の目的は、
今の中国共産党が「第11次5カ年計画」で
やろうとしていることと全く同じです。
国や時代が違っても、
経済成長のさなかにある国が抱える問題、
その問題に対する政府の政策、
というのは、変わらないんですね。

日本の「国民所得倍増計画」は1960-1970年、
中国の「国民1人当たりGDP倍増計画」は2000-2010年。
東京オリンピックは1964年、
北京オリンピックは2008年。
大阪万博は1970年、
上海万博は2010年。

マイカーブーム、マイホームブームは始まったばかり。
有利な為替レートで、増加する輸出、膨らむ外貨準備高。
現在の中国の状況は、40年前の日本にそっくりです。

さて、では、その後、日本はどうなったか。
高度経済成長は、
1973年の第1次石油ショックで終わってしまい、
その後日本は、低成長時代に入っていきました。

それから40年後の2013年、
中国は高度経済成長を続けているのでしょうか。


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