第476回
イケアの早すぎた中国進出

こうした中国の成金の美的感覚や
ライフスタイルに大きな影響を及ぼしたのが、
日本でもおなじみのスウェーデンの家具小売大手、
「宜家家居(いーじゃーじゃーじゅぃー、イケア)」です。

「宜家家居」の中国1号店は、1998年、
北京に開店したのですが、
その当時の中国は「猫足」全盛時代、
北欧風のセンスの良い
シンプルなデザインの家具を買うのは外国人に限られ、
「宜家家居」は閑古鳥が鳴いていました。

しかし、中国の成金のセンスが洗練されていくに従って、
同社の業績もうなぎのぼり、
来年の春には手狭になった1号店を閉鎖して、
北京の北東の郊外に位置するニュータウン・望京に、
イケアの店舗の中ではアジア最大、
世界でも2番目に大きい旗艦店をオープンする予定だそうです。

また、同社は北京以外でも、2003年には上海に、
今月には広州に店舗を出店し、
2010年には中国国内で10の店舗を
展開する予定とのことです。

中国進出7年にしてようやく始まった
「宜家家居」の快進撃。

これだけ長い時間がかかってしまった原因は
「デザインが先進的すぎて、
中国の人たちのセンスが追いつかなかったから」。

1998年、中国の成金がようやくお金を持ち始めて、
「さぁ「猫足」で豪華な生活!」という時代に、
イケアのシンプルなデザインの家具は、
あまりに、もの足りなく見えたのかもしれません。

ただ、進出当時の中国の人たちの趣味に変に迎合することなく、
先進的なデザインを貫き、ブランドイメージを守ったからこそ、
今日の「宜家家居」の成功がある、
というのもまた真なのではないかと思います。

同業他社に先駆けて中国ビジネスの経験を蓄積できる、
という点で、中国進出は早いにこしたことはないのですが、
早すぎる中国進出は、消費者が追いついてくるまでの間、
じっと耐えぬく忍耐力と資金力を必要とするのです。


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