第459回
通勤ラッシュに見る北京の東京化

通勤ラッシュが好きな人はいないと思いますが、
私も東京で働いていた時は、
通勤ラッシュが大嫌いでした。

特に梅雨の時期など、
ただでさえ暑苦しい満員電車のなかで、
隣の人の濡れた傘がズボンに
ベッタリとくっついたりした日にゃー、
あー、もう、発狂しそうになります。

更に、通勤ラッシュの苦痛に耐えること自体は、
何の付加価値も生み出さない、
という精神的ダメージ。

やはり、邱さんがおっしゃられているように、
職住近接を実現して、短時間で楽に通勤し、
余った時間と体力で仕事に精を出した方が、
最終的にはお得なのかもしれません。

そういった意味では、
中国は昔から、職住近接の通勤天国です。
地方の工場などは、敷地内に社宅があり、
出勤は徒歩1分、なんていうのが当たり前です。

私も現在、通勤時間約10分。
これだけでも、北京で起業したかいがあった、
というものです。

しかし、最近、北京などの都市部では、徐々に東京化が進み、
通勤ラッシュに苦しむ人たちが増えているようです。

従来、北京の人たちの主な通勤手段は自転車でした。
「中国」と言えば、「朝夕の通勤自転車の大群」、
というイメージを持たれている方も
多いのではないでしょうか。
しかし、最近は、自転車で通勤する人がめっきり減って、
バスを使う人が増えているようです。

これは、北京の市街地の再開発が進み、
従来、庶民が住んでいた団地が取り壊され、
オフィスビルや高級マンションに
生まれ変わっていることが原因だと思われます。
庶民の住宅はどんどん郊外に追いやられ、
自転車通勤ができる距離を越えつつあるのです。

現状、四路線しかない地下鉄と違って、
北京のバス路線網は充実しており、
バスの数も非常に多いです。
しかし、それでも、
朝夕の通勤時間はどのバスも満員。
更に、マイカー通勤やタクシー通勤をする
金持ちが増えたせいで、
渋滞はどんどん激しくなっており、
1時間以上立ったまま、
すし詰め状態のバスに揺られて通勤する、
なんていうことが
珍しいことではなくなってきました。

これでは、東京の通勤ラッシュとあまり変わりません。
職場に到達するだけで、ヘトヘトになってしまいます。

今後、中国では、サラリーマンが
通勤ラッシュで疲弊してしまい、
本来の仕事に精を出すことができず、
経済成長の制約要因になる、
なんていうことが、
社会問題になってくるのかもしれません。


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