第436回
這い上がって来られない子ライオン
中国政府はかなり慎重に浅い谷底を選んで
わが子を突き落としているのですが、
今後、多分、這い上がって来られない
子ライオンも出てくることが予想されます。
今回の人民元の切り上げで、
最も手痛いダメージを受ける子ライオンは、
輸出を主な生業とする
進出口公司(ちんちゅうこうこんす、
輸出入会社)だと思います。
当社は私の「昔取った杵柄」で、
中国の石炭系活性炭を
日本に輸出する仕事をしています。
当社は輸出権を持っていませんので、
実際には活性炭の輸出権を持った山西省の進出口公司と
日本のお客様で直接契約をして頂き、
当社は進出口公司の連絡代行をする
対日輸出窓口、という形になっています。
この進出口公司は、
活性炭工場から人民元建てで買って、
米ドル建てで輸出していますので、
人民元の切り上げリスクを100%負っています。
契約期間中に人民元が切り上げになれば、
契約残は、切り上がった分だけ為替差損が出ます。
そうした大きなリスクを負っているにも関わらず、
彼らの輸出手数料は、輸出代金の2-3%です。
つまり、今回の約2%の人民元の切り上げで、
彼らの契約残の利益は
ほとんどゼロになってしまった、ということです。
この会社に限らず、
中国の進出口公司の輸出手数料はどこも2-3%程度です。
どうしてそんなに薄利なのかというと、
以前は進出口公司にしか
与えられてこなかった輸出入権が、
工場にも与えられるようになり、
輸出入権を持っていることが、
既得権益ではなくなってしまったためです。
このため、一部の資金力のある進出口公司は、
工場を買収して国内販売に力を入れるなど、
生き残り対策、及び、
人民元切り上げ対策を行ってきましたが、
多くの進出口公司にはそんな資金力はなく、
輸出の扱い量を増やし、
薄利多売で組織を維持するのがやっとでした。
今回の人民元の切り上げで、
そうした薄利多売の進出口公司は、
契約残で軒並み損失を出しているはずです。
既存の契約が切れた後、
国際競争力がなくなった薄利の商品については、
値段が折り合わないため、契約が締結できず、
輸出量が激減することも考えられますし、
工場が人民元切り上げによる
利益率減少をカバーするために、
わずかな輸出手数料を惜しんで、
直接輸出を始めるかもしれません。
自ら変わることのできない
薄利多売の進出口公司は、今後、
這い上がって来られない子ライオンのように
淘汰されてしまうのかもしれませんが、
中国全体の構造改革のためには、
これも仕方がないことなのかもしれません。
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