| 第426回「蒙牛」の「最初の一歩」
 温州商人に限らず、今や堂々たる上場企業となった大企業にも、
 「最初の一歩」は必ずあります。
 高度経済成長を続ける今の中国には、
 松下幸之助の二股ソケットや、
 ソニーのトランジスタラジオの様な、
 「最初の一歩」の話がごろごろころがっています。
 まず、乳製品の「蒙牛(もんにゅう)」。この会社は1999年に内モンゴルで設立された、
 非常に若い会社なのですが、
 ものすごい勢いで成長し、昨年、香港で上場、
 今では、同じ内モンゴルの「伊利」、
 上海の「光明」と並んで、
 「中国乳業御三家」と呼ばれるまでになっています。
 この会社は内モンゴルの大手乳製品メーカー「伊利」の役員だった牛根生氏が、
 数人の部下を連れて「伊利」を飛び出して作った会社です。
 牛氏は役員とはいっても、
 所詮はサラリーマンでしたので、
 そんなに大金を持っている訳ではありません。
 劉さんによれば、お金のない「蒙牛」は北京市場に進出する際に、
 地元北京の小中学生を使ったそうです。
 まずは、学校帰りの小中学生に、自社のアイスキャンディーをただで大量に配りました。
 そして、ただであげるかわりに、食べた後、
 袋を持って自分の家の近所のスーパーに行って
 「このアイスキャンディーありますか」
 と訊いてください、と頼んだのです。
 その日から、北京各所のスーパーには、大量の小中学生が
 「蒙牛」のアイスキャンディーの袋を持って、
 「このアイスキャンディーありますか」
 と訊きに来ました。
 もちろん、進出前ですので、
 スーパーには「蒙牛」のアイスキャンディーは
 置いてありません。
 「こんなにたくさんの子供たちが訊きにくるのに、うちの店には「蒙牛」のアイスキャンディーがない。
 他のスーパーに遅れをとったか!」
 と焦った各スーパーは、
 袋に書いてある「蒙牛」の連絡先に電話をし、
 大量のアイスキャンディーを発注しました。
 かくして、「蒙牛」は営業マンを雇ったり、
 広告宣伝費を使ったりする事なく、
 北京市場を開拓したのでした。
 なんて賢いんでしょう、牛さんは。「金が無ければ、頭を使え」という事ですな。
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