第418回
「親孝行」は死語じゃない

中国の子供たちは甘やかされて育ってはいますが、
不思議とフリーターやニートはいません。

それは、なぜか。
それは、中国の若者が非常に「親孝行」だからです。

中国では、仕事を始めて自分で稼ぐ様になった若者は、
あたかも今まで甘えさせてもらった恩を返す様に、
「親孝行」に励みます。
稼いだ給料は、自分より先に、親の為に使って、
親に良い生活をしてもらう事を何より第一に考えています。

「親孝行」しないどころか、
成人した後も親に養ってもらう、
なんていう事は、
中国の若者にとっては、
信じられない事なのです。

以前、私が丸紅北京支店時代に採用したスタッフは、
日本から中国に帰国したばかりでした。
日本では、彼は、ある日本企業に、
将来の中国進出を視野に入れた
幹部候補生として採用され、
会社経営のエリート教育を受けていました。
しかし、彼の父親が病気で入院した為、
「そばにいてあげたい」という理由で、
あっさりと幹部候補生の地位を捨て、
北京に戻ってきたのでした。

父親の病気が心配で、
高収入も将来の夢もかなぐり捨てて、
北京に戻ってくる。
これが、中国の若者の「親孝行」の心です。

日本ではよく「中国は儒教発祥の地なのに、
全然、その精神が生かされていない」
などと言う人がいます。
多分、出張か旅行かなにかで中国に来て、
いやな思いでもしたのかもしれませんが、
それは、その人が中国人にとって
身内でないからそう感じるだけであって、
「孝」とか、「仁」とか、「信」とか、
そういった儒教の徳目は、
家族や親戚、親しい友達など身内の間では、
脈々と受け継がれているのです。

日本では、
ほとんど死語と化してしまった「親孝行」。
ここ中国の若者は、
ごく当たり前の事として、
「親孝行」を実践しています。


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