| 第407回顧客データを全部消して逃げた「男」
 そういえば、解雇された腹いせに、当社の顧客データを全部消して逃げたのも、
 「男」でした。
 彼は、あまりにも仕事ができないので、雇ってほんの数ヶ月で解雇を言い渡しました。
 これが、彼のプライドをいたく傷付けた様です。
 彼の出社最終日の午後、どうも姿が見えないと思ったら、
 共用ファイルに入っていた顧客データが、
 全て消されていました。
 その後、彼とは全く連絡が付かなくなってしまいました。私は「このまま泣き寝入りかな」と思っていたのですが、
 私のパートナーの劉さんは
 「絶対に許さない!探し出して弁償させる!」と言って、
 翌日から、まるで刑事の様に、
 彼の前の職場や、友人関係の聞き込みを始めました。
 1週間ぐらい経ったある日、劉さんは彼に病気で入院している母親がいる事を
 突き止めました。
 劉さんはその病院に電話をして、入院している母親に、
 「お宅の息子さんがうちの顧客データを全部消して逃げた。
 これはどう考えても犯罪だ。
 このまま彼と連絡がつかないならば、
 公安局に被害届けを出さざるを得ない。
 そうなれば、話の成り行きによっては、
 息子さんに前科が付いてしまう事になる」
 という話をしました。
 その翌日、彼は、突然、当社のオフィスに現れ、泣きながら土下座をして謝りました。
 えげつないと言えばえげつないのですが、
 親孝行の彼にとっては、
 入院している母親が急所だったのです。
 結局、彼には「もうこんな事しちゃだめだよ」と言って聞かせるだけにとどめ、
 顧客データは1から作り直しました。
 私はこの時、「劉さんがいなかったら、私は中国ではなんにもできない」と強く感じたのと同時に、
 この人だけは敵に回したくないな、と思いました。
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