第334回
中国人の消費者意識の高まり

「北京空港、離陸実力阻止事件」の背景には、
ストレス社会の到来もあるのですが、
航空会社間の顧客獲得競争の激化に伴い、
消費者が航空会社を選べる立場になり、
中国の人たちの消費者意識が高まってきた、
という事実もあります。

以前、中国には旅客用の航空会社が
「中国民航」1社しかありませんでした。
1社完全独占ですので、「中国民航」の態度は
「飛行機に乗せてやる」状態でした。
「文句があるなら、乗ってもらわなくて結構。
 何十時間もかけて汽車で行きな!」ってなもんです。

それが1988年の民航分割で、航空会社の設立が自由化、
最盛期には大小20社もの航空会社が競争を繰り広げました。

最近は合併、提携などにより、中国の航空業界は
「中国国際航空」、「中国東方航空」、「中国南方航空」の
三大航空グループに集約される傾向にあります。
しかし、それでも、北京〜上海虹橋路線で、
CA(国際)とMU(東方)が同じ時間に飛行機を飛ばすなど、
乗客獲得競争は更に激しさを増している、
というのが実態です。

競争が激しくなってくると、
「如何にサービスを良くするか」が
乗客獲得のキーポイントになってきます。
昔の様に「ぶちだお」を連発していては、
誰も乗ってくれなくなってしまいます。
そうした背景から、今回は、
遅延理由の説明や賠償金の提示、という、
以前にはありえなかった対応が
なされたのではないかと思います。

一方、消費者側から見れば、
こうした競争の激化により、
「サービスが悪かったら、
 もうおたくの飛行機には乗らない」
と言う事が出来る様になりましたので、
一部の人はちょっとした事でも、
すぐ怒る様になりました。

これは航空業界に限った事ではありません。
サービス業だけではなく、製造業でも同じです。
今後、中国では、どの業界においても、
競争の激化によって、
今まで泣き寝入りをしてきた消費者の消費者意識が高まり、
企業にとっては「如何にサービスを良くするか」が
激しい競争を勝ち抜くポイントとなってきます。

こうした流れの中で、
サービス先進国である日本で生活してきた私たち日本人が、
中国で出来る事はまだまだあるのではないか、
と私は思うのです。


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