第333回
北京空港、離陸実力阻止事件

中国の人たちの「大陸的おおらかさ」が消え、
えらく世知辛い世の中になりそうな兆候は、
もうそこここに現れています。

先日、北京空港で、
飛行機の離陸時間が遅れた事に腹を立てた乗客が、
離陸を実力阻止する、という事件が起きました。

その日の16時50分北京発、海南省海口行き、
中国南方航空CZ6366便は、離陸時間が何度も変更され、
結局、乗客140人全員の搭乗が完了し、
飛行機が滑走を始めたのは、
定刻から5時間30分後の22時20分でした。

その間、南方航空職員が乗客に対し
遅延についての説明をしましたが、
その説明も「悪天候のため」、
「機体の部品が故障したため」など二転三転したため、
乗客の不満が爆発。

南方航空は乗客全員に1人100元(1,500円)の
賠償金の支払いを提示しましたが、
それでも怒りの収まらない10数人の乗客が、
飛行機が滑走を始めたにも関わらず着席を拒否。
乗客全員が着席しないと離陸してはいけない、
という規則により、飛行機は離陸できず、
搭乗ゲートまで引き返しました。

飛行機が搭乗ゲートに到着後、
南方航空の職員と警察官が機内に乗り込み、
乗客の説得を行いましたが、
長時間、埒があかない状態が続いた、との事です。

こんな事は10年前の中国ではありえませんでした。

飛行機は何のアナウンスも無く遅延。
航空会社の職員が説明に来るどころか、
職員を捕まえて「いつ離陸するのか?」、
「何が原因で遅れているのか?」と説明を求めても、
「不知道(ぶちだお、知らない)」を繰り返すばかり。
何時間も待たされたあげく、
「ごめんなさい」の一言も無く、
何事も無かったかの様に搭乗が始まる、
というのが、当時の航空会社の対応でした。

それが二転三転したとはいえ、
ちゃんと航空会社の職員が遅延の理由を乗客に説明、
更に、乗客1人当たり100元の遅延賠償金を支払う、
なんていうのは、
当時と比べれば、信じられない対応の良さです。

以前は、飛行機が何時間遅れても、
それは台風が来たり、地震が起こったり、
という天災に遭うのと同じ事なので、
「怒ってもしょうがない。気長に待つか」と諦める
「大陸的おおらかさ」が中国の人たちにはありました。

しかし、今回の事件の顛末を聞くと、
ストレス社会の到来により、
中国の人たちがどんどん短気になり、
世の中が世知辛くなりつつある事を感じます。


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