第327回
現体制を揺るがすハイパーインフレ

これだけ海外の企業を買収して、
外貨を使っているのにも関わらず、
中国の外貨準備高はどんどん増えています。

2004年9月末現在の中国の外貨準備高は、
5,000億ドルの大台を超え、
5,145億ドルとなったそうです。
この数字は、2003年末に比べ1,133億ドルの増加、
との事ですから、
たった9ヶ月で30%弱も増加した事になります。

景気も相変わらず絶好調です。
2004年1-9月の中国の国内総生産(GDP)伸び率は9.5%と、
2004年の政府目標である7%を大幅に上回っています。

これだけ外貨準備高が増えて、景気が良いと、
普通はインフレになります。

外貨準備高が増える、という事は、
輸出が増加している、という事ですから、
輸出代金として国庫に入った外貨の分だけ、
中国国内の人民元の流通量は増えている、
という事になります。

また、景気が良い、という事は、
需要が供給を上回っている、という事ですから、
モノの値段は高くなって行くのが普通です。

昨年までは、外貨準備高が増えて、景気が良くても、
不思議な事に、中国の消費者物価指数(CPI)は、
ほぼゼロ、つまり、物価は非常に安定していました。

しかし、今年に入ってから物価は上昇、
特に、7月以降、CPIの上昇率は
3ヶ月連続で5%台を記録し、
インフレが本格的になってきました。

私は北京で生活していて、今の所、
「インフレで物価が上がっている」
という実感はあまりありませんが、
物価高が実感出来るぐらいのインフレになってしまうと、
相対的に生活レベルの下がった庶民の不満は、
どんどん高まっていく事になります。

中国政府が最も恐れているのは、
この庶民の不満の矛先が、最終的に、
中国共産党の一党独裁体制に向けられる事です。
ですから、中国政府としては、
日本の高度経済成長期の
「狂乱物価」の様なハイパーインフレ状態は、
現体制を維持する上で、
何としてでも避けなければならないのです。


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