第323回
中国の「良いものを安く作る技術」

中国に進出している日本企業は、
ニセモノ対策に多大な時間と労力をつぎ込んでいます。
北京でも商工会議所が
知的財産権に関するセミナーを開いたり、
大企業になると法務部の知的財産権の専門家が
駐在してきたりしています。

それでもニセモノはなくならない様です。

有名なのは「HONGDA」のオートバイです。
これは重慶の力帆というオートバイメーカーが
生産しているオートバイのブランドです。
力帆側は
「HONGDA」は「轟達」をピンインで書いたものであり、
決して「HONDA」のマネではない、
と主張しているのですが、
これはどう見ても
「HONDA」だと思って買う人狙いのネーミングです。

一方、海南島でホンダオートバイの
コピー製品を作っていた新大洲、という会社があります。
ホンダは当初、
このオートバイメーカーを潰しにかかりましたが、
同社の技術力の高さと生産コストの安さを知り、
一転して手を組む方向に方針を転換、
最終的に同社と共に、
天津にオートバイ生産の合弁会社を作りました。

ホンダは新大洲のコピー製品を分解してみた所、
ホンダの基準に合わない部品はほんのわずか。
この製品が、ホンダのオートバイの
半額以下の値段で販売されていました。

「重要なのは、模倣だろうと何だろうと
 圧倒的に安いオートバイを中国メーカーが作ることができて、
 この市場で広く受け入れられているということだ。
 メーカーとしてはこの事実を謙虚に受け止めなければならない。
 品質が高いから日本メーカー車が高いのは当たり前、
 といったおごりはなかったか、
 もう一度勉強させてもらうというのが今の気持だ」。
日経ビジネスに載っていた
広州本田汽車の門脇総経理のコメントです。
この非常に謙虚で真摯な態度。
すばらしいと思います。

新大洲に足りなかったのは、
「クリエイティビティー(創造性)」です。
「良いものを安く作る技術」は既に持っていました。
逆に、ホンダには「クリエイティビティー」はありましたが、
作った製品のコストは高いものでした。

中国の「良いものを安く作る技術」と、
日本の「クリエイティビティー」。
この2つを合わせれば、
まだまだ新たな価値を生み出せる可能性が
あるのではないか、と私は思うのです。


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