第285回
「今日の雨は、ロケットかな?」
「今日の雨は、ロケットかな?」
「う〜ん、この降り方はロケットかもな」
最近、雨が降ると、北京の人たちは、
こんなような会話を交わします。
これは、恒常的な水不足に頭を悩ます北京市政府が、
ロケットを打ち上げて人口雨を降らせている為です。
おかげで、今年の北京は例年と違ってたくさん雨が降り、
水不足の問題は全くありません。
このロケットの中には、ヨウ化銀か何かが入っており、
打ち上げると上空で破裂、
中に入っていたヨウ化銀の微粒子が
空気中に広がるとの事です。
このヨウ化銀の微粒子を核として、
空気中の微細な水蒸気が集まり、
やがて、重さに耐えられなくなった水蒸気の塊が、
雨粒として地上に落ちて行く、という原理らしいです。
周りの水蒸気はいいのですが、
核になっているヨウ化銀も
地上に落ちてくるでしょうから、
そんな雨、浴びて大丈夫かな、とも思うのですが、
今の所、人体や農作物に何らかの影響が出た、
という話は一切ありません。
このロケットのコスト、
1発1,900元(28,500円)だそうです。
もちろん、1発では雨は降らず、
1度に100発近く打ち上げるそうですので、
1回雨を降らせるのに、
十数万元(150-300万円)の費用がかかる計算になります。
1回雨を降らせるのに、えらいコストがかかるんだな、
と思いましたが、
北京市人工影響天気弁公室の張主任によれば、
1立方メートルの降雨増に要するコストは0.2元(3円)足らず、
北京市の水道料金が1立方メートル2元(30円)ですので、
水道料金だけを見ても、十分割に合う、との事です。
その計算にも驚きですが、
北京市政府の中に、
人工影響天気弁公室という部署がある事自体、
もっと驚きです。
更に、人工雨が都市部に降れば、気温が5℃以上低下、
エアコンの使用が減り、
今、中国で問題となっている電力不足の緩和にも、
大きな効果を上げているそうです。
日本では、干ばつや洪水など自然災害は、
起こるときには起こるものと捉え、
起こった時に如何にその被害を最小限に食い止めるか、
というのが防災の主眼になっている様な気がします。
しかし、このロケットによる人口雨の話を聞くと、
中国は自然災害が起こる事自体を、
人間の力で食い止めようとしている様に思えます。
人工的に天気を変える、というと、日本人の私としては
「そんな不遜な事をすると、ばちが当たるんじゃないか」
とも思うのですが、
神をも恐れぬ共産主義者には、余り抵抗がないようです。
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