第250回
「金は相手が払うと言ってるうちに取っておけ」

私が丸紅の北京支店で働いていた時の上司は、
中国ビジネスの経験が長く、
私は中国ビジネスの進め方について、
たくさんの事を教えてもらいました。
その中でも最も印象深い「教え」は、
「金は相手が払うと言ってるうちに取っておけ」です。

中国ビジネスには不払いが付き物です。
しかし、さすがの中国企業も
「払いたくないから払わない」とか、
「お金が無いから払わない」などと言っていると、
いざ、裁判に持ち込まれた時に、
圧倒的に不利になってしまいますので、
何らかの理由を付けて払わない事が多いです。

多くの場合は、難癖→不払い→値引き要求、
という順番で来ます。
「お前の製品には欠陥があったので、
本来ならば1元も払いたくないのだが、
値引きに応じるなら穏便に解決してやってもいいよ」
という事です。

ここで理不尽な値引き要求を蹴って、
飽くまでも100%の支払いを要求し続けると、
交渉は長期化し、
中国企業はどんどん払う気がなくなってきます。

日本企業の場合、駐在員が値引きに応じようとすると、
中国ビジネスに理解の無い日本の本社からは
「それじゃ、相手の思う壺じゃないか!
お前、死ぬ気で交渉して、100%全部取って来い!」
と言われてしまいます。
死ぬ気で交渉しても、
全額貸し倒れになるリスクが増すばかりなのですが、
取れるうちに取っておこうとすると、日本の本社からは
「あいつは中国側の言いなりだ」とか、
「100%回収しようという気迫が足りない」
などという評価をされてしまいます。

いっそのこと、裁判に持ち込んでしまっても良いのですが、
時間と労力が掛かりますし、弁護士費用も高いです。
長い期間を掛けて勝訴を勝ち取って、
さぁ強制執行だ、という段になったら、
相手企業の主な資産は既に関連会社に移されており、
「煮るなり焼くなり好きにしてください」と開き直られる、
というのも良くある事です。

ここは、例え「半額にするなら払う」という
無茶な要求だったとしても、
筋の悪いお客である事を見抜けなかった
自身の眼力の無さを猛省しつつ、
半分でももらっておいて、
新たな筋の良いお客を見つける事に注力した方が
正解かと思います。
中国企業だって、
金払いの良い会社はたくさんあるんですから...。


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