第245回
「世界の工場」から「世界の研究所」へ

航空のブラジル人パイロットの給料は、
田舎の工場の単純労働者の約100倍です。
大きな付加価値を生み出す人には、
その付加価値に見合った給料を払う、
というのが、今の中国のスタイルです。

仕事が出来る人も出来ない人も給料一緒、
というのが前提の社会主義国家とは思えません。
そういった意味では、日本の「会社社会主義」の方が、
よっぽど毛沢東思想に近い様な気がします。

日本企業も自社の技術者を冷遇していると、
中国企業に高給で
ヘッドハンティングされてしまうかもれしません。
「高給でヘッドハンティング」は
アメリカ企業のお家芸でしたが、
中国が膨大な外貨準備を使って、
国家を挙げて世界の頭脳を買い漁る、
というのはあながち有り得ない話とは言えません。

何しろ、外貨をたくさん持っていると、
アメリカを初めとする諸外国が、
人民元を切り上げろだの何だのうるさいので、
中国としても早く使ってしまいたいのです。

しかし、やはり本筋は、
優秀な中国人研究者の育成です。

1978年、ケ小平氏が改革開放政策を推進する中で、
「科学技術是第一生産力
(科学技術は第一の生産力である)」と発言して以来、
中国は多くの留学生を海外に派遣しました。
しかし、彼らの多くは
海外の恵まれた研究環境、高い給料に惹かれ、
中国には戻らず、
そのまま海外に留まって働く道を選びました。

中国の科学技術の発展の為に派遣した優秀な人材が戻って来ず、
外国の発展の為に働き、
皮肉にも中国国内では、以前よりも更に優秀な人材が不足する、
という事態が起こってしまいました。

こうした優秀な人材の流出を憂慮した中国政府は、
国内の研究環境の整備を進め、
中国に帰って来る研究者を厚遇で迎える事にしました。
お陰で、北京の中関村や大連は、
世界のソフトウェア業界の中でも、
一目置かれる存在となりつつあります。

中国が「世界の工場」である、というのは、
今や誰の目にも明らかな事です。
しかし、中国が、
「外国企業が開発した製品を、安い労働力で組み立てるだけ」
という屈辱的な立場に
いつまでも甘んじているとは思えません。

有人宇宙飛行を実現させるだけの科学技術力を持った中国は、
今後、国家を挙げて、
あらゆる方面で科学技術の発展を推し進め、
「世界の研究所」と呼ばれる日まで、
科学技術立国への道をひた走るものと思われます。


←前回記事へ 2004年5月21日(金) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ