第244回
ブラジル人パイロット

農村にいる大量の労働力予備軍のお陰で、
今後も中国の単純労働市場は買い手市場の状態が続き、
賃金が高騰する事もないものと思われます。
一方で、都市の頭脳労働者の賃金は
上昇を続ける事が予想されます。

特に、部下を統率するマネージャーの供給は、
中国経済の急成長に全く追い着いていません。
今後、中国では、数少ない優秀なマネージャーを巡って、
各社がヘッドハンティング合戦を繰り広げ、
マネージャーが普通の従業員の
何十倍、何百倍の給料をもらう、という、
アメリカ企業社会の様な状況になる事も
無きにしも非ずです。

日本が不景気になってリストラされた部長さんが、
再就職の為の面接で「あなたは何が出来ますか?」と訊かれ、
「部長が出来ます」と答えた、という笑い話がありますが、
マネージャー不足の中国ではこれは笑い話ではありません。
今の中国が求めているのは、部長が出来るあなたです!
部長、是非、中国に来てください!

特殊技能を持った専門家も、
中国経済の急成長によって、供給不足となっている様です。
例えば、飛行機のパイロット。
急速な経済成長で、中国国内各都市を行き来する人が増え、
国内航空各社は増便に次ぐ増便を重ねていますが、
パイロットはそんなにすぐに、
それも大量に養成出来るものではありません。

そんな状況の中、今回、広東省の深航空が、
約60名のブラジル人パイロットを
採用する計画がある事を発表しました。
航空では、
既に4人のブラジル人パイロットが勤務していますが、
非常に優秀、という事で、
今回の大量採用に踏み切った様です。

ブラジルでは12%以上という高い失業率が社会問題となっています。
それは、航空産業も例外ではありません。
ブラジルでは昨年、
410人のパイロットがリストラされましたが、
内、ブラジル国内で再就職出来たのは、
20%にも満たない75人だったとの事です。

運良く就職出来たとしても、
ブラジル国内のパイロットの月給は
1,700-2,400ドル程度。
一方の深航空の月給は
4,000-6,500ドルと2倍以上ですので、
ブラジル人パイロットとしても、非常にハッピーな訳です。

高い失業率に悩むブラジルと、専門家不足に悩む中国。
今回のブラジル人パイロットの国際就職は、
両国が抱える問題を解決する、
モデルケースになるのではないでしょうか。


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