第229回
日本社会の圧迫感

車に限らず、中国では並んでいる所に誰かが割り込んで来ても、
すんなりと割り込ませてしまいます。

日本では信号や料金所で
並んでいる車の列に入れてもらおうとしても、
絶対に入れてもらえません。
各車とも前の車との車間を詰めて、意地でも割り込ませません。

日常生活でもそうです。
日本では、電車を待っている時、
タクシーを待っている時、
マクドナルドで順番を待っている時、
割り込もうとする人がいると、
かなりの確率でもめ事になります。
ひどい場合は、割り込もうとした人が殴られたりします。

割り込みをする人間は、
ルールを破ったので、何をされてもやむなし、
という風潮が日本にはあります。
「やつが割り込んでも1分も変わらないんだから、
いいじゃないか」と鷹揚に構える中国から見ると、
日本人のルールに対する厳格さは病的とさえ言えます。

割り込みに限らず、
日本人はルールを破った人間に対し、非常に残酷です。
それは「法律」という
守らないと犯罪になってしまうルールだけでなく、
「社会常識」という明文化されていない
曖昧なルールに対しても、
破った、とみなされた場合、
容赦の無い攻撃が加えられます。

日本人は本質的に非常に礼儀正しく、
社会のルールを守る民族である、
と中国の人たちは認識しています。
これはすばらしい事なので、
我々中国人もみならうべきだ、
という事になっています。
しかし、本当の所はルールを守らないと「村八分」にされ、
何をされるか分からない為、おとなしくしている、
という部分もあるのではないでしょうか。

ルールを破ったとみなされたとたんに、
社会からはじき出されてしまう、
という社会全体の圧力のお陰で、
日本人は世界でも稀に見る
規律正しい民族になっている事は確かですが、
逆に、その圧力が
日本社会の何とも言えない圧迫感を
醸成しているのかもしれません。

列に割り込んだり、
赤信号でも道を渡ったり、
道端にゴミを捨てたりする事が
良い事だとは言いませんが、
中国社会の弛緩具合を見てしまうと、
日本人ももうちょっと鷹揚に構えた方が
良いのではないかと思ってしまうのです。


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