第210回
後日返答だと!、バカにしてんのか!

こんなスピードの速い中国ビジネスの世界では、
常に即断即決が求められます。
日本の大企業の様にいちいち稟議を回していては、
他社に先を越されてしまいます。
こういう時には、社長がトップダウンでどんどん指示を出して、
会社を引っ張っていく様な経営形態が合理的です。
大きな会社の場合は、
経理(じんり、部長)に大幅に権限を委譲する必要があります。

中国企業と商談をすると、
中国企業はだいたい意思決定をする権限を持った人が出て来て、
その場で商談の成否を決めようとします。
一方の日本企業の駐在員は、
通常、それほど大きな権限を与えられていませんので、
「貴社の条件は分かりました。
本社と相談の上、後日回答致します」となってしまいます。

中国企業の側から見れば、忙しい中時間を作って、
せっかく意思決定の権限を持った私が商談に出てきているのに、
日本企業は単なるメッセンジャーボーイを出してきて
後日返答だと!、バカにしてんのか!
という事になってしまいます。
確かにそれはごもっとも。

こうしたスピード経済に対応する為に、
各日本企業も中国の駐在員事務所を現地法人に格上げして、
現地法人の総経理(ぞんじんり、社長)が、
同社の中国事業のすべての意思決定を行うと同時に、
業績の全責任を負う、という形になりつつあります。

これだけ仕事が増えて、スピードが要求されてくると、
中国でも日本の高度経済成長期の様なモーレツ社員が
夜遅くまで残業している、と思われるかもしれませんが、
そういう訳でもない様です。
もちろん、業種にもよると思いますが、
仕事が忙しくて過労で倒れた、
なんていう人は聞いたことがありません。
みなさん、昼間はモーレツに働きますが、
定時にきちっと帰っているようです。

経済成長で生活が豊かになる事は良い事なのですが、
それに伴って仕事の量が爆発的に増えて、過労で倒れたり、
プライベートの時間が無くなったりしたのでは、
意味がありません。
そうした意味では、今の中国の様に、
経済成長による豊かさを、ちゃんと退勤後や休日に享受できる、
というのが健全な経済成長なのかもしれません。


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