第182回
「まねの出来るアイデアに価値は無い」
先日、日本で知育玩具の卸をしている、という企業の方から、
日本の知育玩具を中国で売りたい、
という事でご相談を頂きました。
日本では少子化に伴い、子供の数が年々少なくなっており、
今後販売量の増加は見込めません。
そこで、一人っ子政策で家庭に子供が1人しかいないので、
親が子供の教育に非常に熱心である、と言われている中国で
市場を開拓したい、というお話でした。
その会社が販売している知育玩具を拝見させて頂いたのですが、
どれも大変工夫が凝らされており、
子供が楽しみながら知恵を付けられる様になっています。
早速、それらの知育玩具のサンプルを持って、
北京で玩具の販売をしている会社に売り込みに行きました。
値段は日本からの運賃を含めた上で、
日本での販売価格より安く設定したのですが、
先方の答えは
「高すぎる。中国で作れば半分以下のコストで作れる」
というものでした。
確かにそれらの玩具はほとんどがプラスチックで出来ており、
中国で同じものを作れば非常に安く出来る事は分かるのですが、
知育玩具の価値はプラスチックの物体そのものより、
それにより子供が楽しみながら知恵を付けられる、
というアイデアの部分にあります。
しかし、現在の中国では
「まねの出来るアイデアに価値は無い」と言わんばかりに、
ニセモノが横行しています。
高度な技術を駆使しており、分解しても分からない
ブラックボックスの部分が多い商品ならば、
そう簡単にはまねをされないかもしれませんが、
簡単な商品やサービスなどは、中国市場で売り出したと同時に、
まねをされるリスクを負う事になります。
更に、中国市場で売り出さなくても、
まねをされるリスクはあります。
先日、お話を聞いた中国企業の社長さんは、
時々日本に行って、
「お、これいいね」と思ったアイデア商品を買って来て、
勝手に自社の工場で同じものを作って、
中国で売っているそうです。
この社長に罪の意識は全くありません。
人は「どうせまねされる」と思うと、
新しいアイデアを考え出さなくなります。
中国政府は外圧対策と捉えているかもしれませんが、
中国の人たちの潜在的な創造力を発揮させる為にも、
知的所有権の保護は、不可欠であると思うのです。
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