第166回
映画界の最下層、「エキストラ」
中国のスタジオでコスト削減を図ったのは良いのですが、
問題はエキストラです。
設定は「日本にある日本料理屋」ですので、
エキストラが全員中国人では、
見る人が見ればすぐに分かってしまいます。
ま、日本のやくざの女親分役が
中国系アメリカ人のルーシー・リューですから、
タラちゃん(クェンティン・タランティーノ監督)としては
細かい所はどーでも良いのかもしれませんが...。
という訳で、彼らは北京で
日本人のエキストラを募集したのですが、また一つ問題が発生...。
日本人はある程度集める事は出来たのですが、
集まったのはみんな時間的に余裕のある留学生ばかり。
一応、「高級」日本料理屋の設定ですので、
どうみても学生にしか見えなかったり、
髪の毛が茶色かったりする人ばかりだと、
見る人に違和感を与えます。
ちゃんとした「日本人サラリーマン」に見える人を、
という事で私に声が掛かりました。
撮影現場に行ってみると、結局、エキストラは
半分が中国人、半分が日本人という構成でした。
中国人のエキストラは、
北京電影学院など映画関係の学校に通う
俳優の卵、女優の卵がほとんどで、
アルバイトでお金を稼ぎたい気持ちが半分、
「北京電影城」の映画関係者にコネを付けて
抜擢してもらいたい気持ちが半分、という人たちです。
日本人のエキストラは、ほとんどが留学生で、
社会人で来ていたのは私を含めて2人だけでした。
朝7時から夜9時まで、1週間ぶっ通しで拘束されますので、
余程の物好きでない限り、
普通の日本企業の駐在員は来ませんわな。
今回の出演で、エキストラは
映画の世界では最下層に位置する事が良く分かりました。
エキストラはほとんど人間扱いされません。
朝7時に呼び付けられたにも関わらず、
タラちゃんが他のシーンを撮る事にしたので、
夕方5時まで待たされる、なんていう事もありました。
その間、雨が降ろうが、風が吹こうが雨曝し。
一応弁当は出ますが、それも道端で食べる事になります。
中国側のエキストラには、
いわゆる「大部屋俳優」の人もいましたが、
私はこれを仕事にするのはいやだな、と思いました。
今回は出演料として1日300元(4,500円)、
1週間で2,100元(31,500円)もらえましたので、
稼ぎとしては工場労働者などと比べるとはるかに良いのですが、
年をとると体力的に雨曝しはきついですし、
エキストラの仕事がいつもある訳ではありませんので、
生活が安定しません。
彼らには、がんばって
1日も早い大部屋脱出を果たしてもらいたいものです。
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