第157回
「やってみなはれ!」

考え方が大きくずれていると思うのは、
「中国で起業したいのですが、
中国政府の政策は今後変わらないでしょうか?」とか、
「中国でビジネスをしたいのですが、
今後、人民元が切り上げになった場合、
どういう影響が出るでしょうか?」という質問を受けた時です。

確かに、政府の政策転換や、為替のリスクは、
ある程度は見込んでおかなければなりませんし、
常に情報を収集する必要はあると思います。
そうした変化に極力影響されないビジネスモデルを
構築する事も大切だと思います。

しかし、極論すれば、そんな事まで心配して
ノーリスクでビジネスを始めようとしたら、
そのビジネスは永久に始まらないと思います。
中国政府の政策転換や、人民元の切り上げは、
個人の力ではどうする事も出来ません。
そうなったらその時に対策を考えるまでです。
中国は「国に政策あれば、民に対策あり」の国。
そんな彼らのしたたかさを見習って欲しいものです。

だいたいが、個人企業の強みは、その決断の早さです。
大企業が稟議を回して、
カントリーリスクや為替のリスクに就いて
検討を繰り返している間に、
個人企業は社長がリスクを見切って、
ズバッと突入するので、
世の中には大企業と個人企業が併存出来るのだと思います。
その個人企業が大企業の様に、様々なリスクに逡巡していては、
資金力のある大企業に勝てる訳がありません。

何か偉そうな事ばかり言って来ましたが、
斯く言う私も、運が悪ければ、
今頃日本で職探しの日々を送っている所です。
こう言ってしまうと身も蓋も無いのですが、
ビジネスが成功するかどうかは、
運による所が大きいと思います。
ただ、その運も、ビジネスを始めてみなければ、
掴み取れる可能性はいつまで経ってもゼロです。

事前にいろいろと調べる事も必要ではありますが、
余りあれこれ心配すると、いつまで経っても起業は出来ません。
実際に始めてみると、事前に考えていたのとは
全く違う展開になる事もあるものです。
私の場合も、中国事務所代行事業を始めるに当たって、
ターゲットはどう考えても
中国語を話せる人材がおらず、
自力で事務所を作る事の出来ない
日本の中小企業だと思っていたのですが、
蓋を開けてみれば、
当社が現在、継続的に業務委託を頂いている日本企業3社の内、
2社は東証一部上場企業です。

中国で起業を考えている方に、
私が一言アドバイス出来るとすれば、
まずは始める事、
鳥井信治郎ではないですが、「やってみなはれ!」という事です。


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