第130回
「金づる」来たる!
現地の事情が良く分からない日本企業にとって、
中国の事情を熟知した、
良きパートナー企業を見つけて合弁会社を作るのは、
非常に有効な手段です。
しかし、最近では、どうしても中国企業の力を
借りなければならない事情が無い限り、
合弁では無く、独資で進出する会社が増えている様に思います。
合弁会社とは、外国資本と中国資本がお金や資産を出し合って、
一緒に作る会社です。
製造業の場合、日本側が独自の技術を提供し、
中国側が既存の販売網を利用して売る、
というのが典型的なパターンです。
こうした役割分担により、
すばらしいパートナーシップを築いて、
業績を上げている合弁会社もありますが、
一方で、中国企業に食い物にされ、
ほうほうの体で日本に逃げ帰る会社もあります。
儲かっている会社は、自分から「儲かっている」とは言いませんが、
逃げ帰った会社は「中国でひどい目に遭った」と触れ回りますので、
「よっぽど信頼出来るパートナー企業が見つからない限り、
中国で合弁会社を作るのは危ない」
という認識が日本企業の間に広まり、
「そんなリスクを冒すぐらいなら、
全額自社で出資する独資企業を作った方が良い」
という会社が増えた様です。
実際、「合弁会社は大赤字なのに、
中国側の総経理はベンツを乗り回している」とか、
「中国側の経営幹部が、私的な飲み食いから生活用品まで、
何でもかんでも会社の経費で落とす」とか、
「二束三文の田舎の土地や建物に、
とんでもなく高い評価額を付けて、現物出資してくる」とか、
中国側のパートナーがどう考えても
日本企業を「金づる」としか見ていないケースも
あるやに聞いています。
私は丸紅北京支店時代に、
河南省の平頂山市にあるコークス工場のコークスを
日本やヨーロッパに輸出した事がありました。
平頂山のコークス工場にコークスの買い付けの話をしに行くと、
いつも同社の販売課長が対応するのですが、
ある時、「投資を前提とした調査」という名目で行くと、
対応が全く異なりました。
同社の総経理は元より、
宴会には平頂山市の副市長が2人も出て来ました。
副市長が2人して、
私の様な若造の話をニコニコして聞いているのを見て、
「丸紅が投資したら、そのお金の一部が、
この人達の懐に入るんだろうなぁ」
と思った覚えがあります。
結局、投資は実現せず、
副市長や総経理の懐にお金が入る事は無かったのですが、
「投資」と聞いただけで、下にも置かぬ対応になるのは、
やはり「金づるが来た!」と見られていたのではないかと思います。
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