第129回
共同経営の利点

優秀なパートナー、という意味では、私には劉さんがいます。
現在、私の会社は、劉さんとの共同経営、という形になっています。
劉さんは私が丸紅北京支店で
石炭貿易の仕事をしていた時の部下である李さんの奥さんですが、
一緒に働いてみると旦那よりはるかに優秀で、
日本の顧客からも絶大なる信頼を得ています。
日本に行った事が無いにも関わらず、
彼女が話す日本語はへたな日本留学経験者よりずっと上手で、
とても前の職場で、
月2,500元(37,500円)の給料で働いていたとは思えません。

よく、共同経営の会社は内紛が元で失敗し易い、と言われます。
共同経営だと「同じ額出資しているのに、
何であいつが社長で、俺が副社長なんだ」とか、
「俺も株主なんだから、あいつの好きな様にはさせない」
とかいう話になるので、
圧倒的な比率の権益を持ったオーナー社長が会社を仕切る方が、
問題が起き難い、という論理です。

しかし、役割が明確に分かれていて、
お互いが相手の仕事に敬意を払っている場合は、
共同経営でもうまく行くのではないかと思います。
当社の場合は、私が日本のお客様の対応、劉さんが中国側の実務、
と役割が明確に分かれており、
お互いの仕事が不可欠である事をよく理解しています。

ホンダやソニーや松下電器の創業期は、
技術屋の本田さんや井深さんや松下さんと
事務屋の藤沢さんや盛田さんや高橋さんの役割が
明確に分かれており、
お互いが相手の仕事を尊重したからこそ、
良い関係を続け、会社が発展していったのだと思います。

私も独立起業したばかりの頃は、一人でやっていました。
いくら従業員がいても、経営者が一人、というのは孤独なものです。
何でも自分で決められるかわりに、
間違った方向に進んでいても、誰も咎める人がいません。
うまく行かない事があっても、誰に相談する事も出来ません。
誰かの意見を聞いたとしても、
最終的な決定は自分で下さねばなりません。

その点、経営上のパートナーがいれば、
話し合った上で、会社の方向性を決める事が出来ます。
役割の違う者が、お互いの意見を尊重し、
謙虚に相手の言う事を聞く耳を持っていれば、
会社が間違った方向に進む事も避けられるでしょうし、
問題の解決も早くなると思います。


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