第109回
「どうして私の給料安いですか?」

中国でスタッフを雇うに当たって、
やっかいなのはスタッフがお互いの給料を教え合う事です。
「教え合うのは止めなさい」と言っても、
給料日の翌日には誰が幾らもらったか、みんな知っています。
そして、必ず、その金額に不満な人が
「どうしてあんな全然働いてないやつより、
一生懸命働いている私の方が給料安いですか?」
と上司に詰め寄るシーンが見られます。

日本では、お互い、だいたいどのぐらいの給料をもらっているか、
会話の中で探り合いをしたりしますが、
給与明細を見せ合う人はいません。
面接でもない限り、会話の中で人の給料を訊くのはタブーです。
しかし、中国の人はその辺割とオープンで、
初対面の人に給料を訊く事でさえ、失礼な事ではありません。

世の中には完全に公平な給与体系など存在し得ませんので、
お互いの給料を知れば、誰かが不満を感じます。
悪いときには全員が不満を感じます。
不満を持ちながら働く事は、
モラール(士気)の低下にもつながります。
経営者としては、こうした状況は避けなければなりません。

避ける方法は2つ、
給与体系を完全にオープンにして、
こうこうこういう理由でお前の給料は安い、と納得させるか、
逆に、給与を教え合う事を一切禁止して、
他の人と比較出来ない様にするか、どちらかです。

工場労働者など単純作業をするスタッフならば、
給与体系を完全にオープンにする事は比較的容易です。
1時間に何個作ったら幾ら、とか、
目標の個数まで行かなかったら幾ら罰金、
などの規定が作り易いです。
実際、こういう形にして、スタッフのやる気を引き出し、
成功している日系の工場も多いと聞いています。

しかし、ホワイトカラーの仕事となると、
なかなか評価が難しくなります。
担当を明確に分けないと評価が難しいですが、
かと言って、担当の部分だけを評価の対象にしてしまうと、
他の仕事を全くやらなくなります。
ひどいときには、自分がいくら暇でも、
外出中の同僚に掛かってきた電話を
「担当が違うから」という理由で取らなかったりします。

そこで当社では、基本給はみんな同じぐらいにして、
がんばった人や業績に貢献のあった人には、
その都度、私とパートナーで協議の上、
不定期のボーナスをあげる事にしました。
但し、ボーナスをもらった事を他のスタッフに漏らした場合、
全額返還してもらう事を条件にしています。
こうすると、スタッフがお互いに給料を開示し合っても、
ボーナスをもらっているのは自分だけだと思っていますので、
「額面はあいつより低いけれども、
実質は俺の方がたくさんもらっている」と思って、
みんなが気持ち良く仕事をする事が出来ます。


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