第99回
「日式高級搬家」苦戦
以前、私はこのコラムで、
日本の引越の高いサービス水準を持ち込んで、
中国の高所得者向けに
「日式高級搬家(日本式高級引越)」を売り込んで行きたい、
というお話をしました。
その後、何度か中国人のお客様の引越の仕事をしたのですが、
なかなかスムーズには行きません。
というか、ほぼ毎回トラブルが起こっています。
通常、当社の市内引越サービスは、梱包は当社でやるのですが、
お届けした後の荷解きはオプションになっています。
そのお客様には、荷解き無しのベースで
書面で見積もりを出し、それでOKを頂いていました。
当日になって、お客様の新居に着くと、
全部荷解きしてくれ、と言うのです。
荷解きは追加料金になる旨をお話しすると、
そんな事を言うなら、全額払わない、帰ってくれ、と言うのです。
書面で出した見積もりの条件を示しても、
地場の引越屋より高い金を払うんだから、
そのぐらいのサービスがあって当たり前だろう、
こんな事でもめる事自体が不愉快だ、と取り合ってもらえません。
結局は、仕方なく無料で荷解きをしましたが、
追加作業料金はきちんと下請けに払わなければなりませんので、
当社には僅かな利益しか残りませんでした。
又、あるお客様は、梱包は自分でやるので、
当日は引き取りに来てくれるだけで良い、という話でした。
当日、行ってみると、グラスや花瓶などの割れ物が
そのまま裸でダンボール箱の中に入れられていました。
このままでは輸送途中で割れてしまうので、梱包し直します、
と言った所、このままで運べ、との事。
最初は意図が分からなかったのですが、
お客様が荷物のパッキングリストに書いた
保険金額を見て合点が行きました。
何の変哲も無い花瓶や食器に
10,000元(150,000円)とか15,000元(225,000円)とかの
高額の保険を掛けているのです。
どうも目的地に着いて、花瓶や食器がうまい事割れていたら、
自分が書いた保険金額が
まるまる現金でもらえると思った様なのです。
世の中はそんなに甘くはありません。
そんなのにいちいち保険金を満額払ってたら、
保険会社はみんな倒産してしまいます。
前回のスキヤキを甘いと怒った人や、
焼肉屋の昼食券を突き返して30元引けと言った人もそうですが、
中国で仕事をしていると、
時々、日本の常識では考えられない様な事が起きます。
中国でビジネスをするに当たっては、
こういった事も乗り越えて行かなければいけないんですね。
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