第83回
ラテンの血

話をビジネスの話に戻します。

人民元の収入を如何に外貨に換えるか、というのは、
中国ビジネスの仕組みを考えるに当たって
重要な事には違いありませんが、それが本質ではありません。
本質は飽くまで「どうやってお金を稼ぐか」です。

人民元は日本に持っていけばただの紙切れですが、
中国国内では立派なお金です。
人民元で貴金属を買って、日本の質屋に持ち込むも良し、
人民元で航空券を買って、日本のチケット屋に持ち込むも良し、
方法は後からいくらでも考えられます。
いっその事、中国に移り住んで、
優雅な生活を楽しんでも良いかもしれません。
収入が人民元でしか得られない事が理由で、
せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうのは、
余りにもったいない事です。

「とりあえず始めてみる。問題が出てきたらその都度考える」。
中国の人達はこういう風に考えます。
非常に楽観的です。
どう考えても「ラテンの血」が入っているとしか思えません。
その昔、シルクロードは唐の長安とローマを結んでいましたが、
もしかしたら、中国はその時代に、
様々な物資と共に
「ラテンの血」も受け入れていたのかもしれません。

一方の我々日本人は、
どうもこういうラテン系の考え方は苦手です。
中国に投資をする場合でも、中国ビジネスを始める場合でも、
まずは「調査」です。
調査に調査を重ねて、
「大丈夫」という確信を得てから前に進みます。
特に大企業の「稟議システム」は、仕組み上、
誰が見ても安全、確実な案件しか通らない様になっています。
しかし、実際の世の中には、
誰がみても安全、確実で、且つ儲かる商売など存在しません。

私の所にも「この商品が中国で売れるか市場調査して欲しい」とか
「中国でビジネスを始めるに当たって、
同業の中国企業を訪問する視察旅行を組んで欲しい」
という様な依頼が来る事があります。
調査会社やコンサルタントなら二つ返事で引き受ける所でしょうが、
私はいつも「そんな事に時間と金を使うのはもったいないので、
取り敢えずリスクの小さい形ですぐに始めてみましょう」
とお答えしています。


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