第75回
日本の二の舞だけは...
日本も1960年代の高度経済成長期の為替レートは、
1米ドル=360円の固定相場制でした。
それが、1971年8月のニクソンショックで
金と米ドルの交換が停止され、
同年12月にはスミソニアン合意により、
円は1米ドル=308円まで切り上げられ、
更に1972年2月には米ドルと日本円のレートは
変動相場制に移行しました。
その後は皆さんよくご存知の通り、どんどん円高になり、
1995年4月には1米ドル=79.75円まで高くなりました。
79.75円と言えば、固定相場時代の360円の約4.5倍です。
輸出企業からすれば、同じものを輸出しても、
4.5分の1の円貨しか手に出来ない、という事です。
普通に考えれば、日本の輸出産業は
壊滅的な状態になってもおかしくないのですが、
先進技術による差別化と、現場管理によるコスト削減により、
日本の製造業は、円高を乗り切って来ました。
これは現在のドルペッグ制下の為替レート
1米ドル=8.28人民元は不当に安く、
現在の実力からすれば約4倍の1米ドル=2人民元が
適正レートである、と言われている中国も他人事ではありません。
ひとたび変動相場制に移行すれば、
過去の日本の様にどんどん人民元高になり、
輸出産業が壊滅的な状態になる可能性は否定出来ません。
影響が及ぶのは輸出企業だけではありません。
国内市場に製品を販売している企業も、
安い輸入品との激しい競争に曝される事になります。
今、1米ドルで輸入された商品は、
8.28元(124円)で売られていますが、
1米ドル=2人民元になれば、
2元(30円)で売られる事になります。
現在、中国政府は「親心」から、
WTO加盟による関税率の引き下げ、という「外圧」を利用して、
国有企業の構造改革を進めています。
これでもかなりの荒療治だと思うのですが、
ここに更に人民元高が加わり、
安い輸入品が入ってくれば、
かわいい我が子が死んでしまうかもしれません。
人民元の切り上げや変動相場制への移行は、
輸出産業を壊滅的な状態にし、外貨準備高を下げ、
一方で、安価な輸入品の流入により、
国内産業をも潰してしまう可能性があります。
「日中タイムマシン経営」では無いですが、
お隣の日本が30年にわたって歩んできた円高の道を
身近に見ている中国政府は、
いくら外圧がかかろうとも、
人民元を高くする様な政策は採らないのではないかと思います。
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