第54回
零細企業は人を採るのも一苦労
前回、中国での「起業コスト」が安い、
というお話しをしましたが、内装より、オフィス用家具より、
何より助かるのは人件費の安さです。
北京では日本語を話せる人材が、
月2,000-3,000元(30,000-45,000円)で雇えます。
日本で起業した場合、人件費が高い為、
人を雇えるぐらいの利益が出る様になるまでは、
社長が何から何まで1人でやって、
死ぬ程働かなければなりませんが、
中国の場合はこの程度の人件費ですので、
最初から人を雇う事も可能です。
北京の日本語人材市場は、完全に買い手市場です。
丸紅北京支店時代は、
スタッフを1人補充する為に履歴書を集めると、
100枚以上の履歴書が集まりました。
そんな状態ですので、
「日系企業に応募してくるのに、
日本語で履歴書を書いて来ない様な気の効かないやつは要らん」
などと言う理由で、書類選考の段階でばっさばっさと切って行き、
「これは! 」と思う数人を面接する、という状態でした。
しかし、こんな買い手市場にも関わらず、
「北京華信公司」にはなかなか人が来てくれません。
人材派遣会社から履歴書を取り寄せ、こちらから電話をして、
「中国駐在員事務所代行事業という、
将来的に非常に有望な事業を立ち上げようとしている」
と説明しても、面接にも来てもらえない場合がほとんどでした。
「丸紅」と言えば、中国でもビッグネームですので、
当社の様な立ち上がったばかりの零細企業と比較する事自体に
無理があるのですが、
それにしても、このギャップには愕然としました。
確かに、求職者の立場に立って考えれば、
「北京華信公司」などという、立ち上がったばかりの無名の会社で、
いつ潰れるか分からない様な所で働くより、
同じ給料だったら「丸紅」とか「三井物産」とか「松下」とか、
誰が聞いても知っている会社で働く方が、
親や友達に話す時も「面子」が立ちます。
日本の零細企業のおやじさんが
「若い人が来てくれない」と嘆く姿はテレビなどで見ていましたが、
そうしたおやじさん達の気持ちがちょっと分かった様な気がしました。
それでもどうにかこうにか働いてくれる人を見つけ、
本格的に仕事を開始しました。
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