弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第706
相続時精算課税を選択する人が減少

前回、医師の税金の話でしたが、今回は、相続税の話です。
日本の高齢者は、資産やお金を持っているけれども、
あまりお金を使わないことから、
高齢者から若い世代に資産を移転させやすくしてお金を使わせて、
景気を良くしようとするために、生前贈与をしやすくしました。

それが、相続時精算課税です。
これまでは、贈与税は、相続税と比べて税率が高額でした。
そこで、生前贈与は、高い贈与税を支払わなければできないものでした。

しかし、国は、お金を使わない高齢者から、
お金が必要でお金を使う若い世代へ贈与がしやすいように、
生前贈与のときには、税率を低くして、
相続のときに、相続税を計算して、清算するという税金の仕組みを作りました。
これが「相続時精算課税」です。

どうせ、相続時に相続税を払うのだから、
前もって、贈与してもらって、そのときに相続税の一部を払うのであれば、
相続の前払いのようなもので、生前に相続が起きたことと同じです。

だから、国は、国民が相続を待つよりは
相続時精算課税を利用して、生前贈与が増えると思ったわけです。

しかし、日経新聞によれば、
相続時精算課税の利用は、大幅に減少しているようです。

この点、日経新聞では、
税理士が「相続時精算課税は相続時まで
最終的な税額が決まらないから、
利用しにくいため」とコメントしていました。

しかし、僕は、土地の値段が下がっているからだと考えています。
相続時精算課税を選択すると、
相続時に精算するとしても、
その評価は、生前贈与時の価格を基準にします。

そこで、インフレが期待でき
将来価格が上がる見込みが高ければ、
相続時精算課税を選択する方が得する見込みが高いので、
相続時精算課税を選択するでしょう。

しかし、今のようにデフレで、
資産が値下がりする見込みが高いのであれば、
今の評価額で相続税を払うと損をする可能性が高いです。

だから、相続時精算課税を選択しないのではないかと思うのです。
まあ、高齢者の方が、意外に自分の財産を生きている間は
手放さないということもあるかもしれませんが。


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2011年12月8日(木)

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