第696回
交渉では言えばよいわけではない
読売新聞によると、
小金井市がごみ処理ができない危機に陥っているということです。
その理由は、小金井市長の市長選での発言のようです。
市長は、市長選で、ごみ処理を他市に委託するようになってから、
4年間で20億円も増額しており無駄となっている
と発言したようなのです。
その後、市長が当選したことから、
ごみ処理の委託を受けている他市は、無駄遣いと思うなら、
委託しないで自分の市でやればよいと
委託を拒否されているということなのです。
今回の市長の発言は、
交渉の場で言ったわけではありません。
市長選での発言で、
そのときは自分が当選するかどうかもわかりませんから、
自分の発言が当選後、
どういう影響を及ぼすかなど
考えてもいなかったのかもしれません。
以前お話ししましたが、契約交渉で、
契約内容にあまり文句を言うと、
契約は切られるリスクがあります。
契約を切られても困らないという状況にある場合は、
強気で攻めることができますが、
契約を切られてしまうと困る場合には、
相手の要求を飲まざるを得ないことになります。
小金井市は、自前のごみ処理場を持たず、
契約を切られると、全くごみ処理ができない
という不利な状況にあります。
そういう状況では、ごみ処理費用を高く設定されても、
飲まざるを得ないわけです。
だから、自前のごみ処理施設を作るべき
というのが市長の発言の真意だったのかどうかはわかりません。
仮に自前のごみ処理施設を作るとしても、
できあがるまでには時間がかかるわけで、
それまでのごみ処理はどうするかという手当が必要なわけです。
仮に、自前のごみ処理施設を作るべきという意見であれば、
他市に委託すると他市に迷惑行為を押し付けることになるので、
自前に比べて高くつくこととなると言えばよかったのでしょうが、
そんな普通の説明では、
選挙で勝てないと考えたのかもしれませんね。
しかし、今の状況で、他市にごみ処理を委託しようとすれば、
他市は、足元を見て、
より多額の委託料を長期間支払うことを
条件にしてくるかもしれません。
市長の言う無駄がさらに大きくなるわけです。
交渉ごとは、置かれた状況によって、
違って来るので注意が必要なのです。
※なお、僕がこの原稿を書いた後に
小金井市長は
本件を理由に辞職することにしたようです。
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