第690回
全支店の預金を差押えられるか
判決は、相手の財産を
差し押さえることができる権利が認められるだけで、
判決を取ったからと言って、
国が取り立ててくれるわけでも、
判決どおりに支払わないとしても罰則があるわけではありません。
したがって、お金を取るためには、
判決に基づき、
相手の財産を差し押さえなければならないのです。
そこで、差押えの対象として思い付くのは、預金です。
相手が会社にしても、個人にしても、
通常お金は預金通帳に入れておくからです。
ところが、銀行は、たくさんあるし、
同じ銀行でも、支店があります。
どこの銀行のどの支店に預金口座があるかは、
債権者にはわからないのが普通です。
そこで、預金を差し押さえるときに、
ある銀行の支店番号の若い順から最後までの預金を、
債権額を満たすまで順番に差し押さえる
という申立てが認められるかということが
裁判上争いになっていました。
これまで、預金の差押えをするには、
支店を特定しなければならず、
取引銀行や支店がわからないときには、
自宅や会社の近くの銀行や支店に対し、
差押えを申し立てていました。
しかし、前述の差押え方法が認められれば、
支店違いにより差し押さえが
空振りとなることが防げることとなります。
この度、この点についての最高裁判決が出されました。
内容はというと、
前述の支店を特定せず、
若い支店番号から順番に差し押さえるという方法は
認めないというものでした。
新聞報道で、詳しい内容はわかりませんが、
差し押さえを受けた銀行が預金の有無や
他に差し押さえがないかなど確認するのが大変だから、
というのが理由だそうです。
しかし、今の時代、銀行は、
全てオンラインシステムで結ばれているので、
一か所で全国の支店の預金有無などが
わかる仕組みになっていると思うのですが。
そうは言っても、最高裁で決着がついてしまったので、
法律でも改正しない限り、
取引銀行の支店までわからないと
預金の差押えが難しいという状況は変わっていません。
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