弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第626回
MBOにおける株の買取金額

MBOは、経営者による企業買収、
即ち、経営者による発行済み株式の買い取りです。
そこで、経営者による株の買い取り金額が問題となります。

もちろん、株を買い取る経営者は金額が安い方がよくて、
株を売却する側の投資家(株主)は
株が高い方がよいということから、
株主と経営者は、MBOにおいて、
利害が対立することとなります。

経営者側は、会社の内部事情に詳しく、
しかも、決算内容を操作できる立場にあります。

だから、自分が将来的に自社株を買い取る予定であれば、
あまり利益を出さないようにしたり、
損を多く出すようにしたりすることは可能です。

これに対し、株主は、会社の内情はわからないし、
経営者が提案した株の買い取り金額を低いと思えば、
任意では売らずに、
裁判で経営者の買い取り金額を争うという方法しかありません。

実際に、MBOによる株の買取代金については、
いくつかのケースで、裁判で争われています。

裁判所の株価の算定の基本的な考え方は、
MBOを発表する前の3カ月から6カ月くらいの市場における
平均株価に、MBOにより喪失する
将来の株価上昇の期待権をプラスした金額とされています。

この将来の株価上昇の期待権分は、
MBOプレミアムなどと言われています。
本来、株式は売らないで持っていることも可能なのですが、
新会社法では、3分の2を超えて株を取得した株主は、
強制的に少数株主から
株を取得することができるようになりました。
そこで、株主は売らないで
将来の値上がりを待っている権利を
強制的に奪われるということから、
その分をお金で補填しようというのが、MBOプレミアムです。

したがって、MBOでは、
市場で流通している金額よりも
2割から3割高い値段で買い取られています。


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2011年2月10日(木)

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