第625回
経営者による株の買い取り(MBO)流行り
株に関心のあるHiQの読者のみなさんは、
最近、新聞等で、上場企業でMBOが行われる
という記事を目にすることが多くなったと思います。
つい最近だけでも、出版社の幻冬舎、
「TSUTAYA」を経営する
カルチュア・コンビニエンス・クラブ、
引越のアートコーポレーションで
MBOが行われるという発表がなされています。
MBOというのは、経営者による株の買い取り、
即ち、経営者による企業の買収です。
上場企業の場合、株は不特定多数の株主が持っています。
したがって、上場企業の持ち主は、
不特定多数の株主ということとなります。
そこで、会社の重要な意思決定をするには、
株主総会を開かなければなりません。
上場企業の場合、ものすごく多くの株主に対し、
招集通知を出さなければなりませんから、
株主総会の招集通知を出すだけでも大変な労力です。
また、会社の財産を減らしたということになれば、
株主は株主代表訴訟により、
損害賠償請求をすることもできます。
そんなことをいちいち考えたり、手続を取っていたりしたら、
リスクは高いけれども高いリターンも
見込めるような事業はできないし、
経営環境の変化にも柔軟に対応できないという理由から、
MBOされているようです。
MBOが流行っている理由はそれだけではありません。
MBOにより、経営者が株の多くを取得すれば、
市場での流通性という上場の要件を
満たさないこととなりますから、当然上場は廃止となります。
上場していることの意味は、
市場での資金調達にあります。
しかし、日本の株式市場では、株価が低迷しており、
しかも、新株を発行して資金を調達しなくても
借入の金利も安いですから、借入により資金が調達できます。
上場を維持していくには、
証券取引所や監査法人に維持費を支払う必要もあります。
そう考えると、上場している意味は、
「上場企業」という会社の名誉以外何もない
ということにもなりかねません。
それなら自社の株価が安いところで、
株を買い取ってしまった方が、面倒なことも、
コストもかからなくなると経営者が考えるのは合理的に思えます。
そういう背景があって、
MBOが流行っているのだと思います。 |