弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第617回
老人ホームで返金トラブル増加

親は子供たちの世話にならずに余生を過ごそうとし、
子供たちも親を自分の家では面倒は見られない
というケースが多くなり、
有料老人ホームに入居する高齢者が増加しています。

しかし、有料老人ホームでは、
入居時に、家賃や入居一時金、保証金などの名目で、
ときには何千万円という多額の金銭を
老人ホームに支払うケースが多いです。

そして、退去時に、
この入居一時金や保証金などの前払金の返還を巡って、
トラブルになるケースが増えています。

内閣府の消費者委員会の調査によると、
平成21年度の消費者生活センターに寄せられた相談件数は、
平成17年度の1.7倍に増加しており、
その約8割が、この前払金返還のトラブルの相談となっています。

有料老人ホームを規制する法律は、
「老人福祉法」という法律です。

この老人福祉法によれば、入居契約の際に、
重要事項説明書を
入居者に渡さなければならないことになっています。

この重要事項説明書に、
前払金の返金についてのルールを
書いておかなければならないのですが、
書いていなかったり、書いてあっても、
返金の際に引かれる項目が
書いていなかったりするものも多いようです。

また、前払金は、老人ホームが、
万一、倒産したときに、
入居者が返還を受けられるように、
保全措置を取らなければならないこととなっています。

しかし、この消費者委員会の調査によれば、
保全されてない老人ホームが半分もあります。

これは、保全措置に関する法律が
できる前に設立された老人ホームがあるためですが、
違法かどうかは別として、半分の老人ホームは、
倒産すると入居者に前払金の返還ができなくなる状態にある
ということです。

老人ホームを選ぶときに、
場所や施設が重視されるとは思います。
しかし、多額の前払金を払うことになり、
実際に、その返金でトラブルになるケースが多いのですから、
契約内容は契約前に
弁護士に確認してもらった方がよいかもしれません。


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2011年1月11日(火)

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