第616回
国立マンション問題で、前市長が賠償責任
昨年の年末のニュースから。
みなさん、古いニュースで忘れているかもしれませんが、
ずっと前に、裁判所が、
景観保護を理由に、
東京の国立市で建設途中のマンションの一部を
撤去するよう認めた判決がありました。
結局、この判決は、高裁、最高裁では認められず、
景観保護を理由に、マンションの撤去は認められない
という結論になりました。
景観保護に既に建築されたマンションの一部を
撤去することを認めた珍しい判決だったので、
この一審判決が出たときは、かなり話題になりました。
この訴訟では、マンション業者側からも国立市に対し、
市が後からマンションの高さを制限する
違法な条例を制定したことにより
営業を妨害されたとして損害賠償請求をしていたのです。
そして、市は、マンション業者に敗訴して、
マンション業者に約3000万円を支払いました。
これに対し、さらに、国立市の住民が、
市が賠償責任を負ったのは、
前市長の責任だから、
市は、前市長に対し、市が賠償したお金を
返還請求すべきだと求めたのが今回の訴訟です。
新聞報道では、詳しい中身はわからないのですが、
判決では「市長が公平性を欠いた発言をしていたという理由から、
市は、前市長に返還請求すべきだ」と判断したようです。
景観を保護すべきというのは、政治的な問題で、
前市長1人で責任を負うべき問題なのか、
当時の国立市でのマンション反対運動における
市長の役割はわかりませんが、
仮に、規制の目的が良いとしても、
後から規制するということは、法律上の理屈からは、
なかなか認められません。
ときには、規制される方から賠償請求されてしまう
ということもありえるのです。
市が規制について賠償責任を負い、
さらには、規制当時の市長までが、
個人でその責任を負わされることになった(まだ一審ですが)
珍しい事案なので、紹介しました。 |