第614回
弁済猶予法は役に立っている
弁済猶予法(モラトリアム法とも呼ばれています)
と言われている「中小企業金融円滑化法」
(正式名称「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための
臨時措置に関する法律」)
が1年延長される見通しとなりました。
法律の内容はどういうものかと言うと、
銀行など金融機関からお金を借りている中小企業と
住宅ローンを借りている個人が、
現在の返済が苦しくて契約どおりに払えないことから
返済条件の変更を希望したときには、
金融機関はなるべくこれに応じなければならないというものです。
この法律、一度当事者間でした契約を、
後から変更することを認めるものですから、
法律上は、かなり問題のある法律になります。
後から変更(契約を守らないこと)を認めるのであれば、
契約した意味がないということになるからです。
しかし、リーマンショック後、
急激な経済状況の落ち込みからすると、
一時的に、収入が落ち込み
契約どおりに払えなくなる中小企業や個人が増えたでしょうから、
このような措置も、やむを得なかったと思います。
実際、この制度のおかげで、
倒産せずに済んだり、自宅を失わずに済んだりした人たちは
多いことでしょう。
この意味で、この法律が導入されたときには、
批判が多かったと思いますが、
実際上は役に立ったと言えるでしょう。
しかし、この法律は、
銀行など金融機関に本来弁済を受けるべき利息や
元本を受け取らせない
という金融機関の犠牲の上に成り立っています。
しかも、借りている方も、
短期間の一時的な制度であれば、
その期間のうちに何とかしようという努力をしますが、
苦しければ何とかしてもらえるということを一度知ってしまうと、
またお願いすればよいという甘えも生まれてきてしまいます。
日本経済全体が回復する見込みがあるのであれば、
この制度をそれまで延長する意味がありますが、
果たして今後日本経済全体が回復する
ということがあるのでしょうか。
どちらかと言えば、
回復する業種と回復しない業種に
分かれていくのではないでしょうか。
現状そうなっているようです。
そうだとすれば、市場の流れに反して、
法律で全部を強制的に救済していくのは、
どうかということになります。
今年は、これでおしまいです。
では、よいお年をお迎えください。
高島総合法律事務所の執務も12月28日で終了です。
執務開始は1月5日からとなります。
来年の連載は、1月1日、1月6日の予定です。 |