弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第566回
顔の傷も男女平等か

事故などで顔に傷が残った場合、
傷により受けるダメージが大きいのは、
男女のどちらでしょうか?

一般的には、女性の方が、
傷により受けるダメージは大きそうです。

法律上は、このダメージを損害額として金銭に換算します。
そして、一定の基準があって、
顔に傷が残った場合、
これまでは女性の方が
多く慰謝料などを請求できることとなってきました。

具体的には、これまでは、
男性が顔に大きな傷が残った場合、
12級の後遺症とされ、
女性の顔に大きな傷が残った場合は、
7級の後遺症とされてきました。

この等級により、交通事故の場合の後遺症慰謝料を算定すると、
男性は12級で290万円に対し、
女性は7級で1000万円なのです。

これは、男女であまりにも不平等ではないかと、
顔に傷が残った男性が、労災の補償の事件について、
裁判で争いました。

そして、裁判所は、一般的に、
女性の方が自分の容姿に関心は高いかもしれないけれども、
ここまで大きく差を設ける合理的理由はないという理由で、
法の下の平等を定めた憲法に違反すると判断しました。

戦後、ずっとこの基準により、
賠償額が決められてきましたから、
それが違憲であるということは画期的な判決です。

この判決を受けた国は、控訴せず、
障害等級を見直すそうです。

では、障害等級が平等になるのかというと、
それはわかりません。
先ほどの判決も、画期的と申し上げましたが、
実は、男女に大きな差をつけるのは違憲だと判断したものの、
判決の内容では、男性に認められたのは障害等級11級でした。
交通事故の慰謝料で言うと、420万円です。

交通事故の慰謝料で言うと、
女性の方が倍以上となりますから、
男女の平等が図られたというのかどうか、というところです。

実際の裁判は、慰謝料について争われたのではなく、
障害に対する補償がいくら受けられるか
という点が争われました。

今後、厚生労働省の基準が
どのように改定されるのか注目です。


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2010年7月8日(木)

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