弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第481回
相続で争いになる原因は?

みなさん、相続というと「大金が入ってくる」、
あるいは、相続争いという言葉があるくらいだから、
「財産を巡って兄弟が争う」というイメージでしょうか?

相続が争いになる原因はいくつかあります。
ある程度資産がある人は、子供たちが相続で争わないように、
なるべくその芽を摘んでおいた方がよいと思います。
 
いくつか相続争いの例をお話します。

まず、相続争いになる原因の1つは、長男の優遇ですね。
やはり子供が男女だと男の子、
長男・次男だと長男にお金をかける傾向があります。

息子が結婚したときには、
家を建ててあげるなどするけれど、
娘が嫁に行くときは、
お祝い金程度で済ましてしまうケースがあります。

また長男の事業に、
両親がお金を出して助けるなどもあります。
長男に自宅をずっと使わせるということも当たります。

親としては、息子、長男に
家あるいは自分の築いた財産を継いで、
子々孫々まで継いで行って欲しいと思うのかもしれません。

しかし、法律上、
子供は平等に相続できるということになっています。
この親や長男が、
長男が優遇されるのは当然だと思っているのだけれども、
法律上は、子供は平等に相続することとなっていることが、
相続争いを生じさせる原因の1つとなっています。

この平等に相続するというのは、
親が亡くなった時点の財産を平等に分けるだけでなく、
過去に遡って平等を図ることになります。

具体的に説明します。兄と妹の2人兄弟で、
母親が既に亡くなっていて、
父親が自宅8000万円と
金融資産8000万円を残して亡くなったとしましょう。

長男が父親と同居していた場合、
残された遺産だけを分けるならば、
長男が自宅8000万円を相続し、
妹が金融資産8000万円を相続すれば平等になります。

しかし、長男が事業に失敗し、
過去、父親に3000万円を出して
もらっていたような事情があった場合、
相続の際にこれも含めて分け方を考えることになります。

自宅8000万円+金融資産8000万円+贈与3000万円で、
遺産は合計1億9000万円ですので、
1人9500万円相続できることとなります。

そうすると、妹は長男に対し、金融資産8000万円の他に、
現金で1500万円を支払えと請求することができるのです。
ここで、長男が現金で支払えればよいのですが、
手持ちがないと、自宅を売却して、
妹に支払うお金を捻出するほかありません。

そこで、長男は、「不動産は5000万円しかしない。」とか、
「父親の面倒を見てきた。」
「妹だってもらったお金はある。」などと主張し、
これに対し、妹側も
「兄は小さいころから甘やかされてもっともらっている」
「不動産はもっと高いはず」などと反論し、
相続争いは、過去のいきさつも含めて、
お互い感情的になり、泥沼化していきます。


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2009年8月11日(火)

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