弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第411回
共同事業のトラブル

知人や友人、取引先との間で
新事業を共同でやろうということは、
よくある話です。

新事業を共同でやろうという場合には、
お互い相手を自分と同じことを考えていると考えがちです。
実際、最初は同じことを考えているかもしれません。

しかし、共同事業を始めて、
事業が軌道に乗ってきたころに、問題が発生してきます。

一方は、新しい事業に進出したいと思い、
他方は、今の事業を伸ばしていくだけで、
新しい分野への進出は不要だと
考え方が分かれていくかもしれません。

そして、考え方の不一致は、
あるとき、相手を会社から排除すれば、
自分が会社を思い通りにできるという行動に結びついてきます。

ここで、ABCの3人で共同事業をするために、
株式会社を設立し、株式を3分の1ずつの割合で持ったとします。

AとBが対立し、AがBを会社から排除しようとするときに、
どうすると思いますか?

AはCと組んで、Bの取締役の任期が満了したときに、
Bを取締役に選任しなければよいのです。

これで、Bは、会社の経営に関与することはできません。
株主の地位は残りますが、前回お話したとおり、
過半数の株を持たなければ、役員の選任権はありませんし、
会社が配当を決定しなければ、配当も受けられません。

株を売ろうにも、上場しておらず、
配当もしていない会社の株を買う人はいません。

Bは、いっしょに事業を始めたのに、
会社の経営から外されてしまうのです。

Bの立場で、このようなことを防ぐためには、
 株式は全体の過半数を持つこと、
 取締役の任期を10年など長期にすること
 取締役の再任されなかったときは、
 AかCか会社に対し、高めの価格で株式を売却できること

などを、ABCの間で、共同事業を始めるときに、
合意書を交わしておくということが必要です。

みなさん、最初は、事業がうまく行くかもわからないし、
まさか、事業がうまく行ったのに
自分が追い出されることになるとは思っていません。

しかし、実際は、共同事業を始めたけれども
揉めて別れることとなったという相談は、結構多いです。
共同事業を営むときには、最初が肝心です。


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2008年11月27日(木)

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