弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第282回
国有林投資で元本割れ

最近、投資詐欺の話をしていましたが、
昭和59年から平成10年にかけて、
国が国有林育成のために、国民から出資を受け、
伐採による収益を配当する
「緑のオーナー」を募集していたけれども、
満期に、出資の9割が元本割れしてしまい
問題となっているという記事が、
新聞に載りました。

現在までの報道によれば、
利回りや元本を保証して出資を募ったわけではなさそうです。

さすがに国は、
出資法違反や詐欺に当たるようなことはしなかったようです。

しかし、元本割れリスクについては、
説明をしていなかったことから、
元本割れが生じてしまい、
出資者との間でトラブルになっているということです。

もちろん、出資は、預金や債権ではありませんから、
元本割れのリスクがあります。

しかし、投資や金融商品が多数販売され、
マスコミなどにも多数取り上げられている現在とは違って、
昭和59年のころには、金融の自由化もされておらず、
ほとんどの人が余剰資金を
預金や債権で運用していた時代だと思います。
(もちろん株をしていた人もたくさんいるとは思いますが、
今よりは少ないでしょう。)

しかも、国がやっている事業です。

元本割れリスクを説明しなければ、
元本割れはしないと思ってしまうでしょう。
逆に、当時の資金運用の考え方からすると、
元本割れリスクを説明したら、
出資しない人も多かったと思います。

出資の募集当時、
元本割れリスクを説明する法的義務があったかは、
なかなか難しいところですが、
元本割れリスクを説明した方が良かったでしょう。

ただ、いつも言っているとおり、
国や林野庁のお金は、みなさんの税金です。
元本割れした出資者に、
みなさんの税金で、全額損失補てんをするというのでは、
この出資で利益を得たかもしれない出資者に甘いような気もします。
もちろん、個々の出資者で、
勧誘されたときの事情は違うので、
損失補てんをされるべき人もいるかもしれません。

しかし、損失補てんをするなら、
当時、緑のオーナーを企画して、実行した
林野庁の幹部や担当者にしてもらいたいものです。
これまた、いつも言っているとおり、
現行制度上はなかなかそうはなりません。


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2007年8月14日(火)

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