弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第256回
一審と二審で結論が全く反対だなんて

元官房長官の政治資金規正法違反という刑事裁判で、
一審で無罪判決が出て、
二審で、逆転有罪判決が出ました。
同じ事件について、一方では有罪、
他方では無罪という全く逆の結論では、
司法の信用性を失わせる
などというコメントが出されたりしています。
裁判の内容の当否は、
裁判の証拠や証言の内容を見ないとわかりません。
しかし、裁判は人が行うものなので、
同じ裁判の専門家である裁判官が判断しても、
判断が分かれる難しい事案はあるのです。

もし、一審と二審で、
判断が全く変わる可能性がないのであれば、
控訴を認める意味がありません。
控訴は、一審の判断を
ひっくり返すためにするものだからです。
普段裁判とは関係ない生活をされているみなさんは、
びっくりするかもしれませんが、
裁判には、担当する人によって、
判断が変わる判断が難しい事案はあります。
僕も、同じ事案なのに、
担当裁判官が途中で交代して、
全く反対の判断を前提にした
和解案を出されたことがありますし、
一審で勝訴したのに、二審では敗訴する可能性がある
と言われたこともあります。

同様の事案の裁判を何件も行なって、
一部の裁判官だけ、
結論が逆だったということもあります。
このことが良いことか、
悪いことかは難しい問題です。
裁判の公平性や信用性という観点からすると、
常に結論は同じ方がよいということになるでしょう。
しかし、それでは、少数意見をくみ上げ、
そちらの方が正しいという判決は
出にくくなってしまう可能性があります。

ただ、一審無罪で二審が有罪、
あるいは二審が無罪で最高裁が有罪というのは、
当事者にとってあまりに酷なので、
一度無罪になったら、検察側は、
控訴・上告ができないという制度にすることも、
一つの方法かもしれません。
でも、そうすると、
みなさんが有罪にすべきと考えた事件も
一審で無罪判決が出たら、
検察側が争えないということとなってしまいます。





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2007年5月15日(火)

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