弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第253回
株の買取価格が安すぎる!

以前から、この欄で、
MBO(マネジメント・バイアウト)、
即ち、会社経営者による会社の買収については、
経営者は株を安く買いたいのに対し、
株主は高く株を売りたいという
対立関係(「利益相反関係」と言います)にあるので、
問題があるという話しをしました。

みなさんも、
新聞やテレビのニュースでご存知かもしれませんが、
経営者の株の買取価格が安すぎるという理由で、
株主が裁判を起こしました。

一般的に、経営者が上場会社である会社に対し、
MBOを行なうときには、
株式の公開買付け(TOB)をするのが普通です。

今回、裁判となったのは、
このTOB価格が安すぎたので、
高くして欲しいということではありません。

TOB自体は、応じるのか、応じないのかについては、
株主の自由なので、
TOB価格が安すぎると思えば、TOBに応じなければよい話です。

したがって、TOBに応じてしまうと、
後から文句を言うことはできません。

今回の裁判は、TOBに応じなかった後の手続の問題です。

MBOするときに、
TOBに応じない一部の株主がいる場合、
全部買い上げてしまった方が、
会社の意思決定を自由、かつ迅速にできるので、
できれば全部買い取りたいところです。

しかし、これまでは、
株主が売りたくないと思っている場合に、
強制的に株を取り上げることはできませんでした。

ところが、昨年施行された新会社法には、
一部の株式を強制的に買い取ることができる制度があるのです。
(「全部取得条項付株式」と言います。)

これを使うと、売主が売りたくなくても
強制的に株を買い取ることができます。

株主は、この強制的に買い取られる価格が安すぎるとして、
裁判を起こしたのです。

はてさて、結果はどうなることでしょう。

どれくらい先か分かりませんが、
結果が新聞に載ったら、
また、取り上げたいと思います。


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2007年4月26日(木)

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